第八話 願いと驚愕と
いつも有難うございます
土日は忙しい><
10/7 再更新
「イシュタルさーん?イシュタルさーん。」
「・・・・・・・」
「・・スプーンの上下が逆さまですよ~」
「スープが全然掬えてませんよー」
「・・・・・・・・・んー」
「そんなんじゃ飲めませんよー」
「・・・・・・・・・んー」
「イシュタルさん鼻毛出てますよ~」
「・・・・・・・・・んー」
「イシュタルさーん、大好きですよ」
「・・・・え・・そ、そんなー(*>ω<*)」
そこは反応するんかい、おい!
「いや、冗談ですよ」
「え?・・・(´;ω;`)・・・・・・・グスグス・・・ス・・・スン・・・・・・・・・・・・・・・・・・んー」
ダメだ、俺の事意外、全く関心が無い。
目の前には、また掬えていないスープを口元に当てるだけで、スープを含むことなく皿に戻してまた掬うという行為を繰り返すイシュタルさんがいる。
どんだけ思い込んだら周りが見えないのか・・・
魔眼に掛かっていても、掛かっていなくても同じじゃないかこれ。
魔眼を持ってきた時も、思いついたら即行動してたもんなー
ここ数日来、イシュタルさんは素行が、かなーり変になっていた。
そうそう、数日というのが判明してたのは、魔眼騒動の後今いったい季節は何時なんだろうって会話をした時に、イシュタルさんが異世界の日捲りカレンダーをくれたのだ。
しかも地球で有り触れた、デジタル時計が付いた優れた日捲りカレンダーだ。
日捲りカレンダーにデジタル時計付くってのが・・・
何とも異世界の雰囲気ぶち壊しだけど、無いよりはマシだし、俺の行動も決めやすいので重宝している。
変になり出した時は心配もしたけど、あんまり構うと直ぐに俺を誘惑してくるから、今は適当にあしらっている。
魔眼効果を最小限にしても、イシュタルさんの俺への好意は変わらなかったみたいだ。
掛かった時ほどの突飛さや狂信さは無くなったが、好意を隠す事は無くなったので、一緒にいれば誘惑してくるのである。
ある時は、ルビさんの願いを聞きだす対策を持ちかけたら、速攻ソファーに押し倒され(ソファー無かったんだけどこの空間の、何処から出たのやら)危うく貞操の危機を感じた。
ある時は、急に後ろから抱き付かれ、首に腕を回したかと思うと耳元で艶っぽい声と共に『お風呂はいかが?ト・シ・ヤ♪』と囁かれた。
見れば直ぐ目の前にお湯の張ってあるバスタブが出現する。
本当なら、ル○ンの如く服を脱ぎ捨てイシュタルさんの・・・あの・・・魅惑の爆乳にダイブして、揉みしだき摘み味わい尽くしたいのだが、俺には出来ない。
いや、しないのだ。
イシュタルさんの好意は嬉しい、嬉しいが故に一旦イシュタルさんに溺れたら、俺はここから何処へも行きたく無くなるし、約束のルビさんの願いを叶える事も放棄してしまうだろう。
ここに居続けるためにイシュタルさんに溺れ、ルビさんを蔑ろにする事は、俺の良心が咎める。
後で正気になった時、後悔が襲って来る事も容易に想像できるから。
もし仮に、ルビさんの願いを叶えてしまったら、此処には居られない、異世界への転生が約束されている以上、イシュタルさんとの別れは確実だ。
イシュタルさんに溺れてはいけないのは俺だけじゃない、イシュタルさんもまた傷付くはずだ。
約束を果たして分かれた時、絶対イシュタルさんは悲しみに暮れるだろうから。
だから俺はイシュタルさんの誘惑に乗らない。
今ならまだ、片思いでお互いが済むから・・・
そんな俺に好意全開で接してくれていたのに、様子が変に成り出したのである。
違和感を感じた時には、既にルビさんに相談していた。
ルビさんは、困ったような顔をして俺を見ながら『大丈夫じゃ、もう少ししたら直るわい』と俺に優しく諭してくれるだけで、それ以上は何も言わない。
毎日深刻になるイシュタルさんの様子を説明しても、大丈夫の一点張り。
何かがおかしい、如何考えても不自然だ。
ルビさんとイシュタルさんが示し合わせた形跡は無い。
それなのにルビさんは解っている様な感じなのが腑に落ちない。
疑惑と不安を抱え、解決方法が解らない苛立ちで、悶々と過ごした。
そんなある日、イシュタルさんがいなくなった。
睡魔が無い為、夜は魔法や武芸の基礎訓練と応用作業などをしたり、どっからとも無く補充される、俺には馴染みすぎる日本の雑誌(週間ポ○トや週間ダイ○モンドなどなど)とかを読んで時間を潰している。
チョイスが通過ぎるが、暇潰しには有難い、有難いが異世界では役に立ちそうも無いのだけれど。
そんな夜の時間を潰し、朝食の時間が来る。
何時もなら、朝8時位にはイシュタルさんの鼻歌が聞こえ、調理さえる具材の良い匂いが鼻腔を擽るはずが、今日に限って何も無い。
何も無い所かイシュタルさんの気配が感じられない。
慌てて探すも、見付からない。
だってここ探す空間狭いんだよ、狭いが故に直ぐに探す所が無くなる。
俺の知っている場所は、この教会のような空間とルビさんのいる暗闇だけ。
まさかと思い、ルビさんの所へ急ぎ駆けつける。
「ルビさん!イシュタルが、イシュタルさんが居なくなった!」
開口一番、ルビさんに事情を説明する。
ルビさんは、何故か全く動じることなく、俺に話しかけてきた。
「そうかいそうかい、イシュタルにも考えがあるんだよ。それよりトシ坊、今日はまじめな話をしようじゃないか」
「それは、確かにまじめな話はちゃんとしますよ。でも、まずはイシュタルさんが何処に行ったか探さないと!」
イシュタルさんの居なくなった不安を、俺の為に、あえて真面目な話で誤魔化そうとしていると思っていた。
「トシ坊、イシュタルは帰ってくるよ、だから先にあたしと話をしないかい?」
その声は何時もの優しく慈しむ様な声とは違い、出会った頃に聞いた、凛として有無を言わさない気迫の篭った声に変わっている。
流石に俺も、声を聞いて只事じゃない雰囲気を察し、ルビさんと向き合う。
話を聞こうと冷静になった俺は、ルビさんの姿に驚愕した。
何かを隠すように手を内側へ巻き込んだ姿勢で寝そべっているし、猛々しいのに優美な尻尾は俺の見えない位置に隠されている。
何時もなら両手を地面にを突き指すように踏み締め、顔を上げ、誇り高く胸を張り、尻尾は悠然と虚空を突き刺すように高々と上げ威風堂々としているのに。
まるで、病気になったように弱々しくへたり込んでいる姿に呆然とした。
「そう驚くでないわい、トシ坊。」
「・・でも、どこか具合が悪いの?」
イシュタルさんが居なくなり、ルビさんまで病気とか、今の俺には嫌な予感を駆り立てるには十分過ぎる。
「心配してくれるのかえ?トシ坊。」
「当たり前だろ!俺此処に来て二人しか知らないんだぞ!」
「その二人の内、俺にとって親のように接してくれたルビさんを心配しないわけが無いじゃないか!」
俺は自分の言葉に吃驚していた。
心配しているのは当たり前として、何故ルビさんを親といってのか?
お婆ちゃんの様だとは感じてはいたが、親とまでは思っていなかったのに。
確かに相談もした、身の上もお互いに話せる範囲で話した。
沢山迷惑を掛けられた気もするけど、迷惑を掛けた事のが多かったかもしれない。
迷惑を掛けているにも拘らず、いつも優しく微笑む姿に、俺は何時しか気付かない内に母親の面影を重ねていたのだろうか?
高校生になっても、母を思う気持ちが燻っていた事に気恥ずかしさが込み上げる。
「ほっほほ、親ときたかえ~そんなんにあたしを慕ってくれるのかい?」
「そ、そうかもしれない、親は言い過ぎかもしれないけど・・・」
「そうかい、慕ってくれるのかい・・・嬉しいね~じゃあ、トシ坊のありがた~い気持ちに応えるとしよう。」
「いやいや、気持ちだけでいいよ」
「ほほほほっほ、そうはいかないんだよトシ坊」
「????」
「あたしの願いを叶えておくれ」
「え・・・・願い・・だって?」
「そうだよ、トシ坊、あたしの願いを叶えて欲しいんだよ」
「そ、それは叶えられるなら叶えたいけど・・・」
何故、今なんだろう?何故、イシュタルさんの居なくなった日と重なるんだろう?
何故?色んな疑問が頭の中で駆け巡る、応えは出ない。
「トシ坊、あたしを殺してくれないかい?」
な・・ぜ・・・?コロス?だ・・と・・・
俺はルビさんの言葉に、ただ呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。
まとめるのが難しかった^^;




