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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第二章 首都イブロニアと新たなる仲間達
17/41

第十七話 月明かりの元で

今回はすこしHですが描写は無しで書き上げました。

シルビアと主人公の絆を深めたかったのですが、見方によっては惨い主人公になってそうで・・・


10/9 再更新

 俺は今、絶賛賢者タイム中である。

 いや、賢者タイムなどと生易しいものじゃない、そう!賢者だ!俺は賢者になっている!!

 ふはははは、賢者とは、かくも心に余裕があるのか!!

 ・・・・・・・

 ・・・・・・・


 いやぁー全然賢者じゃないや・・・・・

 まだ興奮が収まらないようだ。


 あれから、俺とシルビアは無事宿に着いて、一緒に泊まっている。

 ここへは、奴隷商会へと迷い込んだのが嘘のようにスムーズに宿へ到着した。

 もちろん、シルビアの案内もあったし、聞いていた道順を再確認し、直感も外れなかったからだ。

 やっぱり、直感は不確定だな・・・


 着いてからは普通に宿泊予約を入れ、部屋を選択し、鍵を貰った。

 宿の主は、ケチルさんという恰幅の良い、いかにも面倒見の良さそうな女性だった。 

 この女性、かなり豪快だった。



「長旅大変だったろうね~トシヤは風呂でも行って来な。お嬢ちゃんもトシヤの為にお肌を磨いておいで(ハート)」



 いきなり呼び捨ての上、為口モード全開だ。

 しかも、お風呂を勧めてくれるのは嬉しいが、後の余計な一言はマジかんべんです。

 そんな事言ったら、シルビアが意識しちゃうじゃないですか。

 ケチルさんの言葉を聴いて、やはり意識しまくりのシルビア。



「は・・ぁい、ご主人様に喜んでいただけるなら喜んで隅々まで磨きます!」



 何処を磨くんだ?それに何故俺を見る。

 耳、真っ赤にして・・・なに何真面目に答えてるんだよ、シルビア・・・いいんか?いいのんか~~~?

 ゴク・・・唾を飲む音が出ちゃったじゃないか。



「あらあらあらあら、まーもう初々しいわねー、トシヤ優しくしてあげなきゃ男じゃないよ!」



 言うや否や、俺の肩をバンバン叩く。

 本当なら『いってぇ~』と喚きそうな位だが、俺には痛くない、寧ろこそばゆい。

 だから、少し痛いですよ~といった態度を取って、愛想笑いをしておいた。



「ささ、部屋に案内するから、荷物を片付けたらお風呂へいきな。」


「え・・ええ、ありがとう御座います。」


「遠慮はいらないよ!後、晩御飯どうする?あたしが、腕によりをかけた晩御飯用意するけど?」


「っじゃ、お願いします。」


「わかったよ!、うんじゃ手続きしたら直ぐ案内するからね」



 けたたましいが、何処か憎めないケチルさん。

 宿帳に記帳し、長期滞在を考えている事を告げ、まずは10日分の宿泊料金を支払う。

 支払いには宿賃(宿泊設備代込み)、朝と夜の食事代が含まれている。


 料金は宿代が1泊80銅貨、食事が朝5銅貨に夜が10銅貨だそうだ。

 しめて、9銀貨と50銅貨を渡した。

 途中、色々雑談を挟んでメルディオさんの事も伝えたら、更に雑談が長くなったのは言うまでもない。


 直ぐにといながら、直ぐじゃないところは、日本と同様おばちゃんが故なのだろう。

 そんなケチルさんに案内されて、階段を上り3階の部屋に到着する。


 異世界だと舐めていたが、意外に近代的で綺麗な部屋だった。

 イブロニアに来て、下水施設の形跡を見ていたことを思い出す。

 魔法がある位だし、施工に関して代用方法があるのかもしれない。

 もちろん機械類はないが、かなり快適な生活空間を造る技術はあるようだ。


 ドアを開けて案内されると、ドアから直で廊下があり、奥へと延びてる。

 廊下は長さ約2畳分(約3メートル60センチ)あり幅が半畳(90センチ)といったところか。


 廊下を抜ければ、日本でいう16畳間位ありそうな広い部屋が広がっている。

 廊下と奥の部屋の、空間的空きスペースは、クローゼットと洗面所になっていた。


 部屋の中には明かりを灯すランタンがあり、窓は南向きで日差しも入りそうだ。

 窓は、ガラスのようなガラスではない透明な素材が入っていて、空が見える。


 廊下側の壁際には簡易の2人掛けテーブルセット、窓際には小さいながら書斎テーブルがある。

 そして、一番気になったのは、奥の部屋にある大きなダブルベッドだ。



「え~っとダブルですよね?」


「そうさね、ダブル以外ありえないでしょ!」



 その元気さと無駄な気遣いは何処から・・・



「い・・いやせめてツインとかないんですか?」


「なにいってるのトシヤ!2人にはダブルが当然でしょ!」


「ご主人様、わ・・私は覚悟も出来ていますし・・ダブルでかまいません!」


「あらあらあらあら、まー解るわねーお嬢チャンは。」


「はい♪」



 ほんと、このおばちゃんは!!

 そしてシルビアもなに尻尾振ってるんですか!

 後ろの女性2人は意気投合て、なにやら意味深な会話を繰り広げている。


 まー俺も考えなかった訳じゃないし、ダブルでも良いけど、もう少し情緒が欲しかったかなと思う。

 シルビアが良いと言うんだから、ここはこのまま在り難く泊まろう。

 ケチルさんにお礼を言い、部屋で買い込んだ荷物の整理をする。


 整理も終わったので、まずは風呂へと行く。

 貴重品だけは、各自で保管する。

 どの世界でも貴重品に関する取り扱いは何処も同じようだ。

 なので、魔法の巾着だけは俺が持って1階へと降り風呂に向かう。


 風呂は小さな旅館の大衆浴浴場な様なものだった、もちろん男女別だったが・・・

 混浴じゃない事に、落胆はしてないよ?


 お風呂は実に気持ちよかった。

 買ってきたパブは泡こそ出にくいが、これまでの垢を落としてくれ、久しぶりに肌がツルツルしていた。

 心身ともにリフレッシュして、風呂を出てシルビアを待つ。


 銭湯で女性が、先にお風呂から出て待つ光景も頭を過ぎったが、俺のが先に出ていたようだ。

 湯上りで桜色に染まった肌を上気させ、出てきたシルビアに見惚れたのは内緒である。


 そのまま食事に向かい、ケチルさんの出す料理に舌鼓を打つ。

 かなり旨かった、味付けは塩・湖沼などの香辛料を基本に、異世界の知らざる調味料が効いて絶品の味を出していた。

 俺達の感嘆にあざとく気付き、こっちを見ながらVサインをだすケチルさん・・・

 Vサインなんか何処で覚えたのか、この異世界にもあったのか?

 ドヤ顔のケチルさんであった。


 部屋に戻り、テーブルを挟んで座りあう。

 今日はもう一通りの事はした、いよいよやる事がない2人。

 今までのやり取りを考えれば、シルビアの覚悟は解っている。

 ここ・・これは童貞喪失か?

 俺出来るんだろうか??

 不安ではあっても此処は男だ、やってやるぞ!



「そ・・・ろそろ寝ようか?」


「は・・はい!や・・・やさしくお願いします・・・は・・初めてなので・・・ご満足いただけない・・かもしれませんが・・・」


「い・・いやいや、無理しなくていいよ?無理そうならそのまたでも・・・」



 とことん小心者の俺。



「・・え・・・・」


「わ!私はご主人様の為なら全てを捧げられます!そのような事を仰らないで下さい!」



 お・・怒られた?!

 童貞にはどう対処したら良いかがわからん。

 このまま雰囲気を悪くしたくない。

 兎に角、話を続けて場を取り繕おう。



「何故俺に、そんなにも尽くしてくれるの?奴隷だからなのかな?もしそうじゃないなら嬉しいんだけど・・・」



 うっわーサッブー

 頓珍漢極まりない・・・微妙な空気が漂う。

 あ・・・初体験を迎える場がなんて最悪な・・・

 凹む俺に気付いたシルビアは、沈黙の中、少しづつは話してくれた。



「わ・・私は・・・奴隷になる前に借金返済のため、暫くの間色々な仕事をしてまいりまいた。頑張って、努力して・・それでも借金は無くならず、家は困窮を極め・・・何時ごろからか私が奴隷として身を売る事しかないと思うようになっていました。」



 ふむ、ふむ。

 借金か、親が作ったのかな?

 その辺も聞けるかな?


「ある日、私を好条件で買い取っても良い、と言う奴隷商人が尋ねてきて、家の事を考え潮時だと思い、身を売ったのです。」


「・・・・・・・・・」


「奴隷として買い取られたからには、必ず売られます・・・・買われる事は覚悟していました、それから愛玩奴隷も了承しました、その方が高値で買ってくれますから・・・家の借金とその後を考えると・・・」



 言葉に詰まり出すシルビア。 



「でも、私は奴隷としての契約が出来なかったのです・・・」



 ここら辺は奴隷商会で聞いた話になるな。



「何度も何度も契約に失敗し、買取に来た人に悪態をつかれ・・・始めに私を買った奴隷商人は、私を蔑み違う奴隷商人売りつけました・・・それから2度奴隷商人の間を転売され、最後に奴隷商会ギブリオに辿り着いたのです・・・そこでも・・・契約は出来ず・・・買取から日が経ち過ぎ、商品として売る事すら出来ない私は、違約金を背負い、家族を救えずもう死ぬしか無いと・・・お・・おもっ・・・て・・・」



 嗚咽しながらずっと心に秘めていた想いを吐き出すように話すシルビア。

 やはり、切羽詰って居たんだと実感させられる。



「そんな私をご主人様は、何も言わずに契約の儀までしてくださいました。・・・それにあんな大金まで了承されて!・・・私にはそんな価値はありません!・・・もう誰も・・・救って・・・くれないと思っていた・・・それほご主人様は・・・救ってくださった・・・だから、私はご主人様に全てを捧げて尽くしたいのです!どうか・・・どうか・・・」



 そう言って涙を流し、俺の言葉を待つシルビア。

 その、か弱い姿に俺は理性を抑えられなかった。

 泣いて縋る女性の姿は、俺の庇護欲を駆り立て思わず抱きしめてしまった。


 ただただ抱きしめたかった。

 同情は無いと言えば嘘になる、それでも何とかしてやりたいと思った。


 16歳・・・一つ下とはいえ同じ年代。

 俺は何も考えず高校で馬鹿をしていた年なのに・・・

 シルビアは、どんな思いをして過ごしていたんだろう・・・

 シルビアを抱きしめ、優しく愛しく頭を撫でる。



「ご・・・しゅ・・・人・・・さまぁ・・・」


「今からはトシヤと呼んで欲しい、シルビア。」


「は・・い・・トシヤ・・さま・・」


「それでいいよ、それで・・・」



 2人の口が重なり、自然と強く抱き合う。

 シルビアの心が強く求めるのだろう、ただひたすら俺を激しく求めてきた・・・





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 時刻は深夜遅くだろう、時計は無いから月明かりが目印だ。

 月明かりがあるということは、月が出てるんだろうと勝手に解釈している。

 この異世界にも月があるんだと、窓から射す月明かりを冷静に眺めていた。


 回想している内に、本当に賢者タイムになった俺。

 ベットで仰向けになり、窓から射す光に淡く照らし出されて横に寝る、シルビアの肢体を見ている。

 静かな寝息を立て、俺の横にいる存在に愛しさが増す。

 薄い上掛けシーツの中で、ハッキリと解るその全身は女性らしさを隠すことが出来ていない。

 眠るシルビアの頬にそっと口付けをする。

 満足げに、安心しているシルビアの寝顔は、起きているとき同様美しい。



「・・・ご・・・しゅ・・じ・・ん・・さま・・・?」


「トシヤ様だろ?起こしたかな、大丈夫ゆっくりおやすみ。」



 不安そうに起きるシルビアに、優しく声を掛け頭を撫でる。

 一瞬構えたように首を竦めたシルビアは、撫でる手に安堵してか嬉しそうに口元を上げ、また俺に抱きついて、安らかな寝息を立てる。


 始め得同士なので、途中ギクシャクしたが上手く出来たと思う。

 体を重ねる事が、こんなにも情を深めるとは思っても見なかった。


 抱きついたシルビアの頭を撫でながら、俺はもっとしっかりしないとと考えていた。


 賢者タイムは俺に、今日までの自分の甘さを考えさせてくれた。

 ルビさんに優しくされ、イシュタルさんに癒されて、俺は異世界を舐めていたようだ。

 もっと頑張らねばと、決意し眠りへと堕ちていく。



「トシヤ様、トシヤ様、起きてください。」



 耳の傍で甘く囁く声に起こされ、俺は目覚めた。

 目を開けると、昨日の緊張が嘘のような穏やかな顔をしたシルビアがいる。



「おはよう、シルビア。」


「はい♪おはよう御座います、トシヤ様。」



 そういって俺に口付けをし、身支度に向かう。

 俺もまた、起き上がり仕度をしようとするも、シルビアに制されベットで待機となった。

 昨日言ってたように、俺の世話がしたいらしい。

 シルビアの喜ぶ顔に絆されて、俺は彼女の世話を受けた。


 2人の身支度も整い、1階で朝食を取る。

 もちろんケチルさんのニヤケた顔は無視だ。


 朝食後、今日の予定をシルビアに告げると、一緒に行っても良いかと聞くので同行してもらう事にする。


 予定とは、ジーアスさん達に会いに、商館へと赴く事だ。

 資金はまだ、40金貨程ある。

 だからといって、安心は出来ないし、最初の予定通り職探しだ。

 シルビアも奴隷にしたことで出費も嵩むだろう、ここは金策に励むべきと判断した。


 ジーアスさん達にアドバイスを受け、役所にも行かないと。


 今日はこれから忙しくなりそうだ。


 俺は、シルビアと共に宿を後にする。

もう少し早く進めたいんですが、心理描写の回は丁寧に書きたいのです。

遅々としてすいません

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