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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第二章 首都イブロニアと新たなる仲間達
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第十三話 イブロニア

駆け足気味かな?もう少し丁寧でもいいかもしれない


10/9 再更新

 商隊に混じって、王都に向かう道中も、後3日程らしい。

 今はこの商隊の護衛団、その中でも何故か俺を気に入ってくれたジーアスさん達と夕食を兼ねて雑談中だ。

 イシュタルさん以外とまともに話すことが出来るジーアスさん達との会話は非常に楽しい。

 それに、この商隊で出されている食事も、結構美味しく、楽しい晩餐になっている。


 主食は村にいた時と、変らない黒パンが出た。

 どうやら異世界では、黒パンが主食になってるようだ、嫌いではないが日本人だし、出来たら米が食いたい。 

 イシュタルさんの炊いてくれたご飯が恋しい・・・


 異世界のパンは見た目通り黒く、パサパサしている。

 所謂黒パンだからだろうか?

 でも、食感を除けば不味くはない、むしろ日本で食べるパンよりも、素朴な故か味わいがあって旨味も感じる。

 出される副食は、鳥の塩焼きやチーズ、干し肉の入ったスープなど、以外に豪勢だった。


 食事に舌鼓を打ちながら、護衛団の話に耳を傾ける。



「あん時のトシヤは無謀だったっけど勇気は褒めてやる。」


「そうよねー格好悪かったけど、男の子としちゃー上出来だわよ。」


「そうそう、上出来上出来。」



 酒が入っているのか陽気なメンバーは、先日襲来した地竜アースドラゴンとの戦闘での出来事を穿り返し、俺をネタに盛り上がっている。


 地竜は邪竜の一種で下位ランクではあるが、魔物としては相当強いそうだ。

 Cランクと言っていたか?俺にはランク事態わからない、ただ今回の護衛Lvでは、全員が挑んでも勝てるかどうか、出来たら逃げるべき強さだったらしい。



「ふん、格好だけ一人前のクズが何をしたという。」



 そう煽ってくるのは、あのザクリスだ。

 こいつも居たのか・・・俺はコイツが嫌いだ。

 何がって、こうして皆で夕食を突付きつつ、楽しく飲んでいるのに、こいつの持ち奴隷は隅っこでチビチビ食事をさせられている。


 奴隷の姿も何処か覇気が無く、虐げられていそうな雰囲気がプンプンする。


 ザリクスは口も悪いし態度もデカイ。

 奴隷の扱いもクソだし、最悪だ。

 だからコイツはスルーだ、スルー推奨だ。



「っつ、無視かよ餓鬼が。」


「あんまり突っかかるなよザクリス、ほれ飲め飲め。」


「気にしちゃ駄目よトシヤ、さ、お替わりいる?」


「ありがとうミネルバさん。」


「いいのよ、若い子が遠慮しちゃ駄目よ。」



 そういって微笑むミネルバさん(32歳既婚)は目茶目茶優しい。

 相当年上だし、人妻なんだけど女子力高すぎて、惚れちゃいそうな位い出来た人だ。

 ジーアスさんは空気の読める良い男だし、兄貴って雰囲気がとても好ましい。


 こんな人達ばかりなら世界は幸せなんだろうなーっと2人を見ている。

 ザクリスはいらね、『死ねばいいのに』と思ってる。


 嫌な奴には愛想の振りまけない自分が情けないが、嫌なものはしょうがない。

 まだまだ盛り上がりの収まりそうにない雑談の中、ジーアスさんが俺を気遣って退席出来るように促してくれる。



「ま、実際無事でよかったよ、これに懲りてするんじゃないぞ。ほれ、もう夜も更けたし寝て来い、明日も早いぞ。」



 いい奴だな~こんちくしょう。

 ジーアスさん『兄貴』って呼んでいいっすかと、心で言いいながら、喧騒を離れ荷台の寝床に入る。

 寝床といっても荷台に毛布に包まって寝るだけだけどね。


 皆と離れ毛布の中で、思考する。

 昨日は上手く誤魔化せた・・・と思う。

 初っ端から俺の異常さが露呈して、トラブルになりたくなかったからから。


 地竜が襲ってきたのは、昨日の夕方くらいだ。

 王都にも近く、本来ならこんな所で出くわす事は無いのだが、現れたのは仕方が無い。


 地竜を見たときはそりゃー皆騒然としていた。

 護衛団は焦って陣形を組むのも一苦労していたし、商人達は死を覚悟したのか、それぞれの馬車の荷台に篭っていた。

 メルディオさんも荷台に飛び込んできて、毛布を被ってガタガタ震えていたしね。


 護衛団は陣形が纏まった事で、ようやく事態に対処し始める。

 戦闘は避けれないと判断し、商人達に逃げるよう促す。

 護衛団の人々は各々の武器を取り、臨戦態勢に入り、地竜の動きを牽制している。


 俺は荷台から、地竜と護衛団の姿を観察していた。

 全体的に護衛団はLv20ちょい、掛かってきた地竜はLv38、どう見ても無理ゲーです。

 蹴散らされて終わるっぽい雰囲気だし、Lv差が10以上ある戦いは話になりそうにない。

 やばいんじゃないかんなコレっと成り行きを見守っていた。


 心配は的中し、案の定蹴散らされ始める護衛団、このままでは商隊も全滅してしまう。

 俺1人なら問題なく生き残れるだろう、もっと言えば地竜を倒して悠々と王都にいける。

 だが、俺の力は異常すぎるので、要らぬ誤解や注目は集めたくない。

 どうやって目立たず、この事態を乗り切るか。

 暫く考えていたが、どうやってもいい案が浮かばない。

 だから多少訝しがられても、演技をして地竜を追い返し、この場を切り抜けよと考えた。


 考えた手順はこうだ、蹴散らされて気絶している護衛戦士の剣を俺が拾って手に取る。

 剣を構え、地竜に向かって、慌てふためいて突っ込む。

 もちろん気が振れたように突進する演技をしながらだ。

 地竜の目の前で何かに足を取られた風を装って転ぶ、転んで地竜の弱点に偶然剣先が当たる。

 吃驚した地竜は逃げる。


 これだ!万が一地竜が逃げずに襲ってきても対処はある。

 もし地竜が引かなかったら、地竜の足元を氷魔法でツルツルにして転ばせる。

 転んだ地竜に、急所をはずして俺が剣を突き立てればいい。


 兎に角、地竜を追い返す事が目的だ、殺すと面倒だから・・・だって殺すだけの力があるって思われるじゃん。


 早速行動を起こす。

 適当に落ちている剣を取り、考えたとおり地竜に向かって走る。

 ワーワー叫ぶことも忘れない。

 慌てた感じで地竜の目の前に行き、見事に転んで見せた。

 今のところ順調に言っている。

 転んだ拍子に剣を地竜に向かって掲げ、偶然を装い弱点である喉下の逆鱗を刺す。

 問題ない、上手く言ったはずだ、怯えている演技もそれなりに出来たはず。


 しかし、この地竜は馬鹿だった・・・俺との力量差を推し量れないらしい。

 さすが下位のドラゴン、脳味噌が小さいのは伊達じゃないっぽい。


 唸りを上げて俺に食い掛かろうとしたので、剣を遮二無二振るう演技をしながら後退りする。

 っち!このバカ地竜が・・・吐き捨てるも対処しないと拙い。

 魔法を使おうとしたが、俺の突然の行動に護衛団の目が集中しているので、魔法は使えないと判断する。


 仕方なく咄嗟の思い付きを実行する。

 地竜との距離を少し開けて、襲ってくる突進に合わせて護衛団に見えない様に、地竜の足の甲に踵落としをお見舞いする。

 同時に地竜に向かって竜闘気纏って小声で伝える。



「このまま逃げないなら、殺すぞ。」


 

 流石にルビさんから貰った闘気の威力は凄い。

 足の痛みに悲鳴のような雄叫びを上げていた地竜は、ビクっと震えたかと思うと、徐々に後退りし、ピョコピョコと覚束ない足取りで逃げていった。

 ヘタヘタと地面に座って見せて、呆けた演技をする。

 これで誤魔化せたかなと、皆の反応を待った。


 地竜の去った後、一番に反応したのはジーアスさん。

 俺を心配して飛んで来てくれた。


「坊主!大丈夫か!」


「大丈夫です。」


「そうか、良かった・・・しかし地竜が逃げるなんて何かあったのか?」


「わ・・わかりません突然だったので。」


「そっか、そうだよな、トシヤ!無茶しながって・・・でも何とか助かったな。取り敢えず隊列を組みなおし安全な場所まで移動だ。」



 ふーどうやら上手くいったようだ。

 危機が去ったとはいえ、此処が安全ではなくなった為、急いで隊列を組み直し、次の休憩ポイントになる場所まで一気に移動する。

 こうして地竜との一件は片付き、あれからまた移動を続け、今に至る。


 今回の件で、上手く誤魔化す演技が出来た事と、ジーアスさん達のような一部の護衛団の人と交流が持てた事は僥倖だ。


 なにせ情報が少なすぎる今、少しでも役立つ情報が手に入るのは好ましい。

 特にジーアスさんのグループには、女将のように優しいミネルバさんもいる。

 王都での行動が取り易くなって欲しいものだ。

 そう考えて、夜を徹して移動する馬車の荷台で眠りに付く。

 起きればまた状況を冷静に見れるようになっているだろう・・・そう最後に思って目を閉じた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 結局、あの後王都まで何事もなく順調に進み、デリオス王国首都に到着してしまった。

 あの地竜は何だったのだろう?

 疑問もあるが、今は王都に入ることが先だ。


 首都の名前はイブロニアと言う、首都だけに城壁も在り城門も大きい。

 王宮のある城を中心に、円形に町並みが広がっている様に見て取れる。

 城壁の緩やかなカーブと、城から城門のある場所までの距離をみて判断しただけで確証はないけど。


 検問は商隊の通過時に身分証明書を見せただけであっさり通してくれた。

 検問が緩い訳ではないだろうが、流石に異世界と言えども検問でのチェックで、危険人物の詳細を調べる手間が多くなっては誰も町に入れないだろう。


 身分証明のない者や手配書の廻っている犯罪者の特徴に似た人たちは、別室に連れて行かれてた。

 こればかりは、身分証明書をくれた村長に感謝だ。


 町に入ると相当大きなスペースが広がり、家が立ち並び人々が活気に溢れて行きかっている。



「ここでお別れですトシヤさん、大変でしたがお疲れ様でした。予定通り10日での到着でした、良い旅路に感謝を。」


「はい、メルディオさん。こちらこそ有難うございました、またお会いしましょう。」


「トシヤ!俺たちもここまでだ、何かあったら商館に顔を出せよ。」


「またね、トシヤ。」


「はい、ジーアスさんミネルバさん、お元気で。」



 そう言って、別れを告げそれぞれと握手を交わした。

 去り行くそれぞれの背中を暫く見送っていたが、俺も歩きだす。

 王都で拠点となる宿屋に向かう為にだ。


 宿泊先は決めてある。

 メルディオさんお勧めの『ル・ボルド』という宿だ。


 このまま宿を取り、明日にはジーアスさんを尋ねて見たい。

 職探しに協力してもらいたいのだ、だって『初めてならギルドを尋ねるといい』なんて親切な言葉は、商隊でも護衛団でも検問でも言われなかったから・・・


 冷たいぞ異世界、もうすこし定石どおりの展開にしてくれよっと嘆く。


 そんな訳で、俺は宿屋に向かって歩いている。

 もちろん今回はちゃんと宿屋の場所を聞いている。

 しかも直感がこっちだと告げているので間違いはない。

 直感に従って村を発見したしね。


 意気揚々と町並みを観察しながら歩く。

 町並みはファンタジー世界そままだ。

 中世ヨーロッパの雰囲気だ。


 ただ、当時のヨーロッパは、至る所が汚物にまみれで、歩くスペースもままならない環境にあり、汚物を避ける為にヒールが作られたと語られる位なのだったと言う。

 だから、糞とか匂いとか覚悟していたが、心配損に終わった。


 首都は非常に清掃が行き届いて、匂いも無い。

 家々からはパイプが伸びていて地面に潜っている。

 どうやら下水設備が整っているようだ。


 マンホールらしきものも見えるし、水路のようなものも散見することが出来る。

 思いの他文明の高い綺麗な町並みだ。


 行きかう人々も多種多様だ。

 『解析』を弱く使ってみると、名前と種族と年齢が見える。

 強弱設定が出来る『解析』は非情に便利だ。

 行きかう人々の頭の上には、MMO同様にそれらが浮かんで見える。

 こんなとこだけファンタージー!

 っとキョロキョロとおのぼりさんの様に見回す。


 人族はもちろん犬獣人・狼獣人・猫獣人などタイプは様々、エルフにハーフエルフ、ドワーフ・フェアリー・ノームといった妖精系も沢山居る。

 後、見たことも聞いた事もない種族もいてそれこそ種族の坩堝だ。


 デリオス王国は大陸南部にある為、比較的亜人に寛容なのかもしれない。

 地球でも南部諸国は人種も多く多種多様だったと思う。

 アメリカなどは別ものだと思うけど。


 俺は興奮しながら町と人を眺めて歩き進んだ。

 教えて貰った通りに進み続け、そろそろお目当ての宿『ル・ボンド』のある5番街に出た。

 ここを曲がって、この先に・・・行き着いた場所には立派な建物がある。

 ビンゴ!っと迷わなかった事にはしゃぐ俺。


 そのまま歩いて建物に近づく。

 建物は、俺から見れば貴族が住むよな立派な造りだし、ドアも重厚でいかめしい。

 聞いていた宿屋のイメージとは違ったが、異世界の常識は俺には解らない。

 これが普通かなっと、建物のドアを開け中に入る。


 中に入ると大きなホールに出た。

 映画やアニメでしか見たことのないような、大理石で出来た豪奢なホールの先には受付らしきものがあった。


 おや?っと思いながらも受付に向かって進むと、受付嬢が2名立ち上がって俺に会釈する。



「「いらっしゃいませ、お客様。」」



 息の合った挨拶が聞こえた。

 1人の受付嬢が、俺に完璧な営業スマイルで話しかけてくる。


「当館は初めてでございますか?」


「はあ・・・ええ??」


「では、改めまして奴隷商会ギブリオにようこそおいでくださいました。本日はどのような奴隷をお求めですか?」


「・・・・・・・」



 ここは何処?この状況はなあに?

 俺は受付嬢達の会話をただ聞き流すしかできなかった。

ようやっと奴隷と亜人がらみの話になります。

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