097 憧れの人
私には、憧れている人がいる。それはサークルの先輩。ファッションもイケてて、顔もそこらへんの芸能人より遥かにカッコイイ。あんな人の彼女になれたら、どれだけ幸せだろう。
でも、奥手の私は、先輩に声をかける勇気すらない。ただこうして同じ場所に集い、遠くから先輩を見つめているだけ。何かきっかけの一つでもあればいいのに……。
私はそう思いながら、人とのコミュニケーションを避けるため、携帯ゲームで遊び始める。
「お、アンタもそこのサイト、ハマってんの?」
そこに声をかけたのは、憧れの先輩だ。
あまりに急すぎて、私は言葉が出なかった。
「は、は、は、はいぃ……」
「面白いよな。いろんなゲームあるしさ」
「は、はい。あの、先輩はどんなゲームやってるんですか?」
私は思い切って、そう尋ねた。一概に携帯ゲームといっても、無数のゲームがあるのだ。
「今一番ハマってるのは、牧場とガーデニング! 見ろよ、俺の庭。めっちゃ凄くね? 結構金かかってるんだよ。ここの花壇なんて、薔薇植えるのにいくらだっけな……とにかく、すげーの。決まった時間に水やりしてるしさ。この間、カラスに荒らされて大変だったんだよ。あと、スズメも結構天敵。でも網とか張って、こっちのミニ菜園は無事。こっちはクリックが難しくて水やるのも一苦労ってゆー、あからさまにバグ? みたいな? まあでも、頑張って水やってるよ。菜園楽しいよ、菜園。収穫楽しい! あと、牧場はこの間、ブタとニワトリ増やしたんだけど、忙しくて餌やれなくて可哀想なことしちゃってさー。牛は今日も乳搾りしたよ。今度牛増やしたいなー。でも牛舎が狭いから無理みたいな? 馬はサラブレット育てたいよね。やっぱ男のロマンっつーか、夢? でも牧場って、雑草の手入れとか大変だよなー。モグラとかも出てくるし。っつーか、こんなのに金かけてたら、現実世界の金がねーっつーオチ」
幻滅した……私は止まらない先輩の言葉を聞きながら、ただ体を震わせていた。
「……牧場農家をナメんなー!」
人は見かけに騙されてはいけない。そう学んだ瞬間だった。




