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096 空き巣にはご用心

 隣の家は、それなりに大きく金目の物がありそうだ。番犬もいるが、玄関の近くに繋がれ、庭には来ない。

 隣の俺の家から垣根を飛び越えれば、犬に気付かれることなく、庭から侵入出来るはずだ。そしてなにより、この季節は出かける時もリビングの窓が開いていることを、俺は知っている。

 と、その時、隣の家から奥さんが出て行った。近所付き合いも少なからずあるため、家族構成はわかっている。この時間、奥さんが出かけたということは、中に誰もいない。たぶん買い物だろうが、一時間は戻らないというのが、日課としてわかっている。

 俺は前々から侵入の計画を練り、自分の家と隣の家を隔てる壁に足を掛けた。


 案の定、庭に侵入しても番犬は来なかった。そしてやはり、リビングの窓も開けっ放し。

 防犯ベルや防犯カメラの存在も疑ったが、奥さんとの話でそれはないと聞いたし、玄関などにもカメラはついていなかったと事前に調べてある。


 リビングにはノートパソコンと家計簿が置いてあり、たった今、奥さんが家計簿をつけていたことが窺える。そんな推理はいらないと、俺は空き巣に集中した。

 すると、リビングの棚には、大事な物が入っていそうな小さな引き出しがある。

「ここかな?」

 そっと引き出しを開けると、案の定、中には通帳と印鑑、現金数万円が入っている。通帳は面倒なので、現金だけを頂くと、俺は奥の部屋へと入っていった。

 奥の部屋は寝室で、鏡台の前には高価そうな指輪やネックレスがあったので、俺は根こそぎそれを取ると、余裕で家を出て行った。


 それから小一時間後、奥さんが家へ入っていくのを見届け、俺は不敵に笑った。現金はすでに俺の財布の中、盗んだ指輪はネックレスは、足がつく前に地下蔵へ隠しておいた。まず見つからないだろう。

 だがそれから数十分後、警察が俺の家を訪れた。

「どうかしたんですか? 刑事さん」

 良い人を装って微笑む俺の手に、手錠がはめられる。

「おまえを逮捕する!」

「な、なに言ってるんだ! 証拠は?」

「一部始終を見ていた人がいるんだよ」

「なんだって? でも、防犯カメラも何も……」

「じゃあ、見せてやる」

 刑事は俺を連れて、パトカーに乗せた。そこで見せられたものは、見憶えのあるパソコン。隣の家にあったパソコンだ。

「パソコンがどうかしたっていうのか?」

「このウェブカメラで、おまえの悪事は全世界に配信されていたんだよ!」

 そこには、パソコンに付いたカメラに映っていた、僕の犯行が克明に録画されていた。そしてそのまま、リアルタイムで世界配信されていたことを知る。

 またそうなったのは偶然のことで、たまたまパソコンをハッキングしていた人間が、僕の姿を捉え、録画と配信を行っていたのだと知った。

 悪いことは出来ない……俺は犯行から数時間も経たず、同じ犯罪者の手で捕まったのである。ただ面白半分のネタとして……。

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