090 ブスとかなんとか言わないの!
私は容姿に自信がない。
でも、奇跡的に彼氏も出来て、毎日は充実している。
でもでも、やっぱり周りの子と自分を比べて、日に日に自信を失くしてる。
でもでもでも、自分のためにも彼氏のためにも、綺麗になりたいって思ってる。
「おまえ、姿勢悪い」
彼の言葉に、私は顔を上げた。デートで歩いている最中、私は思わず背筋を伸ばす。
「そうそう」
彼は満足げに、私の隣を歩いてる。
でも、私は彼より背が高い。少しでも低くするために、ヒールのある靴なんか履けないし、気付けば膝を曲げて歩いたり、背中が曲がってる自分がいる。
「お、撮影かな? めっちゃ可愛い子」
ふと、彼が言った。
目の前には、雑誌の撮影隊らしき人たちがおり、スタイル抜群で可愛いモデルさんがポーズを取っている。
「はあ……」
私は彼にわからないように、小さく溜息をついた。
どれだけ努力したって、あんなに可愛くはなれない。彼にも申し訳なく思う。
「ブース」
その時、彼はそう言って、私の頬をつねった。
正直なまでの彼の言葉に、私は傷付いて俯く。
「……どうした?」
自分が言ったことにも関わらず、彼は怪訝な顔で私の顔を覗く。
「……ブスでごめん」
涙を堪えて、私はそう言った。
途端、彼が吹き出すように笑った。
「バーカ。おまえ、ブスの語源知らないの?」
「え?」
「ブスな人っていうのは、無表情な人って意味」
「そうなの? でも私、本当にブスだし……」
「まったく。本当に馬鹿な奴のことを馬鹿って言わないのとおんなじ。おまえは可愛いよ」
いつものように卑屈に捉えながらも、私は嬉しさに笑う。
彼の手は、私の頬を軽くつねり、そして頭を撫でる。
「ブスとかなんとか言わないの!」
「うん!」
私は胸を張って、また彼とともに歩き始めた。