084 不思議な体験
ふわふわふわ。
空を飛んだことはないけれど、飛べたらいいな、なんて思ってる。
ふわふわふわ。
なんだか気持ちがいい。心地がいい。このままずっと、ここにいたい。
私はあまりの心地よさに浸り、やがてやっと目を見開いた。
すると、そこは自宅の屋根の上。
「うわっ。なに、夢?」
私は辺りを見回し、そして自分の体を見る。透き通っていて浮いている。
「やだ、怖い……」
そう言いながらも、心地が良いのは変わらない。
私は自分の部屋のベランダへ行く。すると窓をすり抜けられ、自分の部屋に入ることが出来た。
そこで私は、ドキッとする。
私のベッドでは、誰かが眠っている。いや。私だ。
触れても同化は出来ないし、向こうはピクリとも動かない。私の精神がここにあるからだろうか。
「どうしよう……夢だ、夢だ。覚めろ、覚めろ!」
半ば泣きながら、私は目を閉じたり開けたりして、じたばたと転げ回る。
さっきまで感じていた心地よさも、不安に負けて感じない。
「美玖。起きなさい!」
お母さんの声で、私はビクッとした。と同時に、今まで分裂していた精神が肉体に戻る。
私の肉体は、汗でぐしょぐしょになっていた。
「お母さーん!」
私は慌てて起き上がると、お母さんに抱きついた。