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078 バカップル
「れみ。手、動いてない」
「ごめん、竜ちゃん」
昼下がりの中庭で、少女は箸を少年の口へ持っていく。
「次、竜ちゃん。あーん」
「あーん」
少年の掴む箸が少女の口に入ろうとした瞬間、それは零れて落ちた。
「あ、悪い」
「もう、竜ちゃんってば。ひどい」
「もともと箸苦手だって言ってるだろ」
「れみ、全然食べてないんだけど」
「ハイハイ、今あげるからねー」
そう言って、少年は口移しで少女にごはんを運ぶ。
「やだ、汚い」
「本当にそう思ってる?」
「ううん。竜ちゃんのならいい」
クラスメイトたちは、そんな光景を教室から眺め、そして目を逸らす。
「ドのつくバカップル」
「ありゃあ迷惑行為で金取れると思うよ」
冷めたクラスメイトとは反対に、バカップルの熱は上がる一方だった。