075 なりたい自分
メガネに三つ編み、冴えない顔。同じ格好してても、可愛い子は可愛いでしょ。
大根足に太い腕。そんな体を露出するほうが、きっと世間に怒られる。
たった十年ちょっとの人生でも、すでに勝ち組負け組っていうのは出来ていて、いつからか卑屈になっている、自分。
「じゃあとりあえず、なりたい人になってみる?」
親友に腕を引っ張られ、私はメガネを外し、髪を下ろした。それだけでもう、違う自分がいる気がする。
「ダメダメ。もっと変わらなきゃ」
放課後の教室、まだクラスメイトが残っている前で、私はスカートの丈を短くされ、上まで閉められていたシャツのボタンを二つも開けられた。
その光景を面白がって、他の女子たちが自分のメイク道具を持って私の周りに集まる。私はスタイリストがついた女優のように、その体を預けた。
「やだ、こんなスカート丈。パンツ見えちゃうよ」
「ダイジョウーブ。女子高生のパンツなんか見えて当然。ほら、背筋伸ばす」
「でも、大根足……」
「出してりゃ減ってくる。気にしない、気にしない。世界は十代のうちらのもんよ」
親友の言葉通り、私はそれだけで世界を手に入れた気さえしていた。だって目の前の自分は、明らかにさっきまでと違う。
でも私は、やっと浮いていた自分の存在を周りに染まることで、個性というものを失った。それが結果的によかったのかは、わからないけれど――。