069 肉食系男子
草食系男子なんか流行ってたけど、俺は断然、肉食系。
十七歳――。せっかくの遊び時。青春を満喫しなきゃもったいない。周りの男どもだって、考えていることはみんな同じ。モテたい、ヤリたい、アソビたい。それだけだろ。
どうせ付き合うなら、可愛い子のほうがいい。ブランドバッグを下げるように、街じゅうの男どもに見せびらかしたくなるくらい。そんなの、女だって同じだろ。
それを手に入れるためなら、少しくらいの努力も惜しまない。筋トレだってバイトだって、まだガキと言われる年でも一人で生きてくくらいの甲斐性持たなきゃ、女なんてついてこない。ただモテたいって言ってるだけの男と一緒にするなよ。
「おまえ、また彼女変えたんだって? もったいないな、あんな可愛い子を」
友達がそう言った。
「お古でよければ紹介するけど?」
「うわ、鬼畜。なんでおまえだけ、そんなモテんだよ」
「女だって俺みたいなやつわかって寄って来てんだよ。俺もブランドバックと同じ」
冷めた目で、俺は煙草を吸った。煙草の味がうまいなんて思わないけど、きっと親とか社会とか、つまらない世界か何かに対するささやかな反抗なんだろうな。
「ブランドバックね。流行がコロコロ変わるってやつ」
友達の言う通り、一通り食いまくった俺の後に、地味な友達がモテ始めた。
それでも俺は、冷めた場所から脱せずに、また本当の恋すら出来ずに生きていくのだろう。肉食系のまま、ただ獲物を探す。
それでもちょっとは信じてるんだ。真実の恋ってやつをね。