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059 ハッピーバースデイ
君が生まれた日、僕は柄にもなく必死に走って病院へ向かった。
僕は父親で、彼女が母親。そして君が生まれてきた。
君の小さな手が、僕のごつごつした指を握る。それだけで感動したんだ。
僕はどうして、君に触れるのが怖かった。だって壊しそうなくらい儚い幼子だもの。
でも君は強く育った。まるで自分の分身のように、彼女の分身のように、生まれてきてくれたことだけが幸せ。そして僕の宝物だ。それはいつまで経ってもね。
今日は僕の誕生日。僕の両親も、そうして僕を愛してくれたのだろう。そしてこの愛を、僕が受け継ぎ、君が受け継ぎ、そして新しい生命に受け継がれていくはずだ。
なんと美しい連鎖なのだろう。
僕はキャンドルの向こうに映る、嫁いでゆく君の姿を見つめながら、そんなことを思っていた。