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041 ロボット

僕はロボット。まだ人間とは程遠いロボット。体は寸胴、手足も短い。

そんな僕らでも、決められごとがたくさんある。

ひとつ、にんげんを傷つけてはいけない。

ひとつ、にんげんに逆らってはいけない。

数えきれないほどの制約があるけれど、僕らは決められた仕事をやるだけ。


「おりこうさん」

こんな僕でも、褒めてくれる人がいる。

みいちゃん。僕が仕える家の娘。まだ小さいが、僕のことが大好きなみいちゃん。僕もみいちゃんが大好きだ。

人間を好きになってはいけないという制約はあっただろうか……。

僕のコンピューター頭脳にそんな疑問がよぎったが、僕は仕事もこなしているし、人間を傷つけたりしない。大好きなみいちゃんを、傷つけるもんか。


ある日のこと、僕は突然、電源を切られた。

物も考えられない。こう思っているのは、少しばかりの充電が残っているためだろう。辛うじて、僕の思考は動いていた。

みいちゃん……僕はどうなるのかな。


「リコールですって。高いお金出して買ったのにね」

お母さんの言葉に、僕は絶望した。

どうして、いやだ、僕は暴走なんかしないのに。


だけど、僕の意見が聞き入れられることはない。僕は人間に仕える身。ただ黙って、みいちゃんとも離れることになるのだろう。

やがて、充電が切れようとしていた。


「嫌だ! 返さないで!」

みいちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえ、僕はなんだか暖かい気持ちになった。この気持ちは、どの説明書にも載っていない。

僕はロボットだけど、愛されていたよね。みいちゃん……。

君に会えて、僕は……。


そこで、僕はすべての機能を停止した。


悲しい悲しい物語……。

でも、それは終わりじゃなかった。

どのくらいの月日が流れているのだろう。それを知る術を、僕は知らない。

だけど目の前には、知っているような、知らないような女の人が、僕の電源を入れていた。

「小さい頃、大好きな掃除機があってね。リコールになっちゃって残念だったけど、こうしてリサイクル素材を使った二代目が出てきてくれて本当に嬉しい」

ああ、みいちゃんだ――。


僕はこれからも、人間に仕える。

いつか終わりが来ても、もう悲しくなんかないよ。

こうして一時でも、君の側にいられたんだから。君の役に立てたんだから。


だけど、人間たちに一つだけ言わせてくれるなら嬉しい。

少しでも長く、僕らを大事にして……。

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