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038 あいつ
この恋を、いったい誰に相談出来る?
僕の目は、いつもあいつを追っている。ずっと一緒にいるあいつ。
危なっかしくて、馬鹿みたいに笑う、太陽みたいなあいつ。
あいつは僕の手を引っ張って、外へ連れ出す。
ある時はサッカー。ある時はドッジボール。ある時は……。
「おい。大丈夫か?」
不注意でボールが当たった僕に、あいつは心配そうにそう尋ねた。
「大丈夫だよ」
「でも、顔色悪くね?」
なんの用心もしないあいつは、僕の体に触れる。一瞬にして火照る気がした。
「大丈夫だって。でももう休む」
僕はあいつの手を逃れて、グラウンドの片隅に座った。
それでも僕の目は、いつもあいつを追っている。
この恋を、いったい誰に相談出来る?
男同士、同性のあいつを――。