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367 ひとり、家族、行事

 彼氏いない歴、早三年。

 仕事の忙しさにかまけて恋愛をする時間がなかったなんて、私は女として終わっているのだろうか。

 すでに今年も誕生日、クリスマスと、恋人たちの行事を一人きりで過ごしてきた。

 せめて友達とでも会えばいいのだが、あいにく友達だって同じように忙しいのは目に見えているし、なにより一人のほうが楽だという自分がいる。


「ああ、今年ももう終わりかあ」

 ビールを飲みながら、年末の歌番組を一人見つめる私。

 初めて一人だった誕生日や正月は寂しかったものだが、今の私にはもう行事という概念もないのかもしれない。

 除夜の鐘を一人で聞きながら、私は新年を一人で迎えた。


 と、その時、携帯のメールが鳴る。友達からのあけおめメール。

 それと同時に、田舎にいる母から電話が来た。

「あけましておめでとう。今年も帰って来ないの?」

 遠くて面倒で、しばらく帰っていない実家。

「ああ、うん。そのつもり」

 三日後からは、また会社生活が始まるのだ。

 あまり実家にはいられないし、結婚話などを振られるのが嫌で、あまり寄りつかなくなっている。

「もう。正月くらい帰ってきなさいよ」

「だって結婚だとかなんとか面倒なんだもん」

「そりゃあそうよ。その年で……いやもう言わないから、帰ってらっしゃいよ。お父さんだって寂しがってるわよ。あんたの好きなもの買ってあるから、たまにはいらっしゃい」

 なんとなく心が揺れ、私は静かに微笑んだ。

「わかった。じゃあ……夕方行くね」

「そう? 待ってるわ」

 実家は居心地がいいとも言えないが、ここにいるより豪華な食事もあるし、たまには帰ったほうがいいに決まっている。

 私は思い直して支度をし、実家へと向かった。


 恐ろしいくらい変わらない田舎町は、いろいろな思い出が詰まっている。

「あれ、久しぶり――」

 駅で偶然出会った人は、初恋の彼……という、ベタなシチュエーション。

 でも、以前のように盛り上がる心は、私にはもうない。

「久しぶり……」

 それでも私の心は、なぜか乙女心に変わっていて、可愛く見られたいという気持ちもある。

 この久しぶりの帰省で、何か物事が変わるかしら。

 そんなことを思いながら、私は実家へと出向く。

 久しぶりに私は新年最初の行事というものを、一人ではなく、温かい家族の元で迎えることが出来た。そしていつか私にも、温かい家庭を持つことが出来るだろうか。

 当たり前に待っていた家族。いつもそこにある家庭。その幸せが永遠じゃないってわかっているのに、それでも私が安心しきっているのは、いつまでもここが私の帰る場所だからなんだと思う――。

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