表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
366/371

366 年の瀬

 今年も残すところあと数日。

 やっと年末年始の休みに入ったものの、大掃除、買い物、年賀状など、いろいろなことに追われている。

 プライベートなことだからと、ついつい手を抜きがちなところもあるが、新年を気持ちよく過ごしたいから、ここは真面目にやっておかなければ。

「おかあさーん」

 そんな時、子供たちの部屋から泣き声が。また兄弟喧嘩したなと悟り、私は仲裁に入る。もう、こんなことをしている暇はないのに。

「あんたたち。喧嘩している暇があったら、ちゃんと掃除しなさい」

「だってー」

「だってじゃないの」

「はーい……」

 喧嘩の相手よりも怖い私に、子供たちは渋々掃除を始める。

「なあ。これはどこにしまえばいい?」

 今度は夫からの呼び声。

「もう。なに?」

「だから、これはどこに……」

「そんなの自分で考えてよ。いらないものは捨てるのよ」

「自分はあんまり捨てないくせに」

「何か言った?」

「いいや……」

 人のせいで中断されるのは、思いの外しんどいものがある。思うように進まずに、どんどん頭に血が上っていく私。

「おかあさーん」

 またも子供たちの呼び声。

「もう、今度は何?」

「お兄ちゃんが――」

「おまえのせいだろ――」

 さっきの続きで喧嘩か。私はため息をつき、大きく息を吸う。

「いい加減にしなさい!」

 私の声とともに、黙る子供たち。せっせと動き出す夫。

 怒涛の年末を終え、くたくたになった私に、夫がビールを差し出した。

「おつかれさまでした」

 そんな夫に苦笑し、私はビールに口をつける。

「あー、なんとか終わったわね……」

 遠くで除夜の鐘が鳴り始めた。

「今年もありがとう。来年もよろしく」

 夫の言葉に、私は静かに微笑む。

「こちらこそありがとう。来年もよろしく。でも……来年の今頃は、もう少しバタバタしないといいな」

「ハハ。努力するよ。子供たちも、一つ大人になるしね」

「期待してるわ」

 鐘の音が静かに止み、私たちはまた新しい年を迎えることが出来た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ