366 年の瀬
今年も残すところあと数日。
やっと年末年始の休みに入ったものの、大掃除、買い物、年賀状など、いろいろなことに追われている。
プライベートなことだからと、ついつい手を抜きがちなところもあるが、新年を気持ちよく過ごしたいから、ここは真面目にやっておかなければ。
「おかあさーん」
そんな時、子供たちの部屋から泣き声が。また兄弟喧嘩したなと悟り、私は仲裁に入る。もう、こんなことをしている暇はないのに。
「あんたたち。喧嘩している暇があったら、ちゃんと掃除しなさい」
「だってー」
「だってじゃないの」
「はーい……」
喧嘩の相手よりも怖い私に、子供たちは渋々掃除を始める。
「なあ。これはどこにしまえばいい?」
今度は夫からの呼び声。
「もう。なに?」
「だから、これはどこに……」
「そんなの自分で考えてよ。いらないものは捨てるのよ」
「自分はあんまり捨てないくせに」
「何か言った?」
「いいや……」
人のせいで中断されるのは、思いの外しんどいものがある。思うように進まずに、どんどん頭に血が上っていく私。
「おかあさーん」
またも子供たちの呼び声。
「もう、今度は何?」
「お兄ちゃんが――」
「おまえのせいだろ――」
さっきの続きで喧嘩か。私はため息をつき、大きく息を吸う。
「いい加減にしなさい!」
私の声とともに、黙る子供たち。せっせと動き出す夫。
怒涛の年末を終え、くたくたになった私に、夫がビールを差し出した。
「おつかれさまでした」
そんな夫に苦笑し、私はビールに口をつける。
「あー、なんとか終わったわね……」
遠くで除夜の鐘が鳴り始めた。
「今年もありがとう。来年もよろしく」
夫の言葉に、私は静かに微笑む。
「こちらこそありがとう。来年もよろしく。でも……来年の今頃は、もう少しバタバタしないといいな」
「ハハ。努力するよ。子供たちも、一つ大人になるしね」
「期待してるわ」
鐘の音が静かに止み、私たちはまた新しい年を迎えることが出来た。