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364 三文戯曲「ロミヲとジュリエッド」

   <登場人物>

     ジュリエッド……女性。ヒロイン。ロミヲの家とは親同士が争っている。

     ロミヲ……男性。ヒーロー。少しナルシスト。

     ロザライソ……女性。サブヒロイン。美しい美貌の持ち主。

     牧師……男性。ナレーションの役割含む。



   <第一場・バルコニー>

     幕が開くと、下手側にジュリエッドの家の外壁。

     バルコニーの上にはジュリエッドが星に願いをかけている。


ジュリエッド 「ああ、ロミヲ様にもう一度会いたいわ」


     そこに、上手からロミヲ登場。


ロミヲ 「ああ、ジュリエッド! あなたに会いたくて、危険を顧みずやってきました」

ジュリエッド 「ロミヲ様!」


     ロミヲ、ジュリエッドのいるバルコニーへよじ登る。

     が、ロミヲ、よじ登ることが出来ず、仕込んでいた梯子を使って登る。

     二人の手が触れる。


ロミヲ 「僕たちの家はいがみあっているけれど、僕の君への愛は本物です」

ジュリエッド 「私の両親があなたの家を嫌いでなければ、こんな苦しい思いはしないのに」

ロミヲ 「僕も同じ気持ちだが、両親など関係ない。僕は君を愛しているんだ」

ジュリエッド 「ああ、ロミヲ。あなたはどうしてロミヲなの」

ロミヲ 「ああ、ジュリエッド。どうして君はロザライソじゃないんだ」

ジュリエッド 「ロザライソ? それはどこの方のお名前なの?」


     ロミヲ、予めバルコニーの下に仕込んでおいた大パネルを掲げる。

     パネルには美しい女性の写真がある。


ロミヲ 「僕が片思いしている相手です」

ジュリエッド 「でも、あなたは私を愛していると、今言ったばかりですわ」

ロミヲ 「もちろんです。でも見てください、この写真の女性を」


     ジュリエッド、ロミヲの持つ写真を、近眼のように近づいて見つめる。


ジュリエッド 「この女性がなんですって?」

ロミヲ 「この世に二つとない美しい顔立ち。スタイル。彼女こそ僕の天使なのです!」

ジュリエッド 「では、私のことは遊びでからかっているんですの?」

ロミヲ 「馬鹿だな。君にはその愛嬌のある顔、イモのようなスタイルがあるじゃないか」

ジュリエッド 「あら、そう? って、どこも褒めてないじゃないの!」


     ジュリエッド、ロミヲの持つ写真を膝でへし折り、バルコニーの下へ投げつける。


ロミヲ 「ああ、ロザライソ!」

ジュリエッド 「不愉快だわ。愛してるなんて嘘を言って!」

ロミヲ 「勘違いしないでくれ。ロザライソは高嶺の花。君こそ僕にふさわしい」

ジュリエッド 「納得いかないけど……本当に私を愛してくれるなら、もうそれでいいわ」

ロミヲ 「ああ、美人は三日で飽きるというから、僕は君を好きになるよう努力する」

ジュリエッド 「ちょっと。それは私をキープしたいというふうに取れるわ」

ロミヲ 「なんということを。君はネガティブ思考なんだね。もっと世界に目を向けて」

ジュリエッド 「世界?」

ロミヲ 「そう、結婚しよう」

ジュリエッド 「ああ、もうなんでもいいわ。行き遅れる前に行くわ~」



   <第二場・教会>

     SE、ウェディングを想像させる鐘とBGM。


神父 「あなたは神を信じますか?」

ジュリエッド 「え?」

神父 「あ、間違えた。あなたは神の名のもとに、健やかなる時も病める時も……」

ジュリエッド 「誓います」

神父 「早いです。まだ聞いてないです」

ジュリエッド 「でもどうせ同じでしょ? ロミヲを夫とすることを誓います」


     神父、咳払いをしてロミヲを見つめる。


ロミヲ 「僕も誓います」

神父 「で、では、この結婚に意義のある方は――」

ジュリエッド 「いないでしょ。ここには誰もいないんだから」

ロザライソ 「ちょっと待ったー!」


     声とともに、ロザライソ、客席から登場。


ロミヲ 「君は! ロザライソ!」

ジュリエッド 「なんですって? あの女がロザライソ?」


     ロザライソ、ロミヲの前に立つ。


ロザライソ 「異議あり! この結婚に反対します!」

ジュリエッド 「なんなのよ、あんた!」

ロザライソ 「あんたこそ関係ないわよ。すっこんでなさい」


     ジュリエッドを相手にせず、逃げようとするロミヲの手を掴むロザライソ。


ロザライソ 「ロミヲ。あんた一日中私を追いかけ回してたくせになんなのよ」

ロミヲ 「だってそれは……君が僕になびかないから」

ロザライソ 「まあいやね。恋の駆け引きじゃない」

ロミヲ 「そうだったの? じゃあもしかして、君も僕のこと……」

ロザライソ 「当たり前でしょ。ちょっとおつむは弱いけど、一途な所が好きだったのに」

ロミヲ 「なんということだ! それは本当なの? ロザライソ」

ロザライソ 「もう。そこまで言わせる気?」

ロミヲ 「そんなこととはつゆ知らず、僕はこんなイモで満足しようと……」


     ジュリエッド、二人の間に割って入る。


ジュリエッド 「ちょっと! なんなのよ、このシナリオは!」


     ロミヲ、ジュリエッドの手を取る。


ロミヲ 「すまなかった、ジュリエッド。僕が馬鹿だったんだ」

ジュリエッド 「ああロミヲ。私たち、このまま結婚できるわよね?」

ロミヲ 「それは出来ない」

ジュリエッド 「ちょ、ちょっと……」


     ロミヲ、ジュリエッドから離れ、ロザラインの肩を抱く。


ロミヲ 「罪深き僕の美貌で、君を惑わせたことを謝るよ、ジュリエッド」

ジュリエッド 「はあ?」

ロザライソ 「それは私も納得できないけど」

ロミヲ 「でも、僕は真実の愛に目覚めました。ロザライソ、君こそ僕の太陽」

ロザライソ 「ああロミヲ。私も少し意地悪をしすぎたわ。あなたが好きよ」

ロミヲ 「そうとわかれば、早くここから出よう。愛の逃避行だ!」

ジュリエッド 「ちょ、ちょ、ちょっと! 私は?!」

ロミヲ 「君とは家柄的にも合わないし、顔もそんな好みじゃない」

ジュリエッド 「そんな!」


     ロミヲ、もう一度ジュリエッドの手を取る。


ロミヲ 「イモはイモなりにたくましく生きるんだ。いいね? ジュリエッド」

ジュリエッド 「うん……」


     ジュリエッド、うっとりしている。

     その間に、ロミヲはロザライソを連れてはける。


ジュリエッド 「って、ちょっと! ひどすぎる、あの男……許さない。見てなさいよ!」


     ジュリエッド、ロミヲたちと同じ方にはける。

     暗転。

     神父だけがライトアップされる。


神父 「かくして筋書き通りにならなかったロミヲとジュリエッド。その後はいかに……」



   <第三場・ジュリエッドの家>

     明かりがつくと、ジュリエッドの部屋の中。

     テーブルと椅子だけがあり、ジュリエッドがお菓子を食べている。


神父 「その後、ジュリエッドはロミヲを捕まえ、半殺しに……」


     そこに、ロザライソがスキップをしながら登場。


ロザライソ 「ねえ、ジュリエッド。これ、シャニーズのコンサートチケット」

ジュリエッド 「嘘! 年越しライブ?」

ロザライソ 「行くでしょ?」

ジュリエッド 「もちろんよ! ありがとう、ロザライソー」


神父 「ロミヲの悪さにはたと気づいたロザライソは、ジュリエッドに加勢。いつしか二人は仲良しに」


     そこに、ロミヲが数人の赤ん坊を抱えたまま、よろよろと登場。


ロミヲ 「ジュリエッドー」

ロザライソ 「あ、なんか呼んでるよ?」

ジュリエッド 「そう? 聞こえないけど」

ロミヲ 「ロザライソー」

ロザライソ 「本当にありがとうね、ジュリエッド。私を目覚めさせてくれて」

ジュリエッド 「いいのよ」

ロザライソ 「思えばただの独占欲よね。あいつが他の女に目が行ったからってだけ」

ジュリエッド 「その独占欲が邪魔して、結局あいつと結婚しちゃったけどね」

ロザライソ 「かわいそうに、あんなやつと……」

ジュリエッド 「本当。私もロザライソみたいに、早く気付けばよかったのに……」

ロミヲ 「ねえ、ふたりともー」

ジュリエッド、ロザライソ 「何よ!」


     睨みつけるジュリエッドとロザライソに、背筋を伸ばすロミヲ。

     完全に立場が逆転している。


ロミヲ 「いや、あの……子供たちの面倒見てるから、夕飯の買い物に……」

ジュリエッド 「あ、ロザライソ。夕飯食べてく?」

ロザライソ 「いいの? 食べる食べる」

ジュリエッド 「だって。ロミヲ、行ってらっしゃい」

ロミヲ 「い……いい加減に!」


     冷たい視線に、すぐに意気消沈するロミヲ。


ロミヲ 「……行ってきます」

ジュリエッド、ロザライソ 「行ってらっしゃーい」


     ロミヲ退場


ロザライソ 「なんかちょっぴりかわいそう」

ジュリエッド 「私の心の傷は死ぬまで消えないわ」

ロザライソ 「おお、怖い。ああ、あの時一緒に逃げなくて正解だわ。私たち、仲良くしましょ」

ジュリエッド 「もちろんよ。悪いのはロミヲだけよ」


     神父登場。ライトアップされる。


神父 「かくして、一時はワルと化したロミヲも、強い女性たちの前にはなすすべもなく、その過ちを一生後悔して生きることになるのでした――めでたし、めでたし」


     オチのSE

     カーテンコール

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