361 ブレーキ
年下の彼は、憂いだ目で私を見つめる。
彼の中にも迷いや我慢を強いられていることが多々あるんだろう。
それがわかっていても、私は年の差を肯定することも否定することも出来ずにいる。
ただ感情のままに動くことは危険だし、この年にもなればブレーキは嫌でもかかる。
暗い影を落とした私の頬に、彼の手が触れた。
一緒にいても、離れてみても、これが恋だと実感せざるを得ない。
あなたが年上だったならば、私は体ごとこの身を預けて、任せることが出来たかしら。
それを悟ったかのように、強引な腕で唇を奪った彼は、まっすぐに私を見つめる。
そんな目で見ないで。
後ろ暗いことがあるかのように、私は目を逸らすことしか出来ない。
でも彼は、私の手を握ったまま、優しいまでの微笑みを見せる。
こんな私を、それでも追いかけてくれるというの?
だったら私も、プライドや世間体などすべてを捨ててしまおうか。
それが出来るには、まだ少し時間がかかるだろう。
でも、彼となら――。
動けずにいる私を不安に思ったのか、彼もそれ以上を踏み出せずにいる。
そんな彼に、今度は私から彼の首筋に唇を寄せた。