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342 優しさはときに凶器へ変わり、私を闇へと突き落とす

 パチン、という音とともに、痛みが手に広がった。

 目の前のあなたは、すべてを失ってでも手に入れたかった愛しい人。

 そんなあなたは能面のように、冷たくなんの感情もない顔で、

 ただただ怒りをぶつける私を無抵抗で受け入れ、そしてすり抜ける。



 これではいけない。

 あなたを憎んで、殺したいほどに憎めば、すべて忘れて終われるの?

 子供のようにだだをこねるみたいに、私は私の行動を恥じた。

 でも、どれだけ叩いても、あなたの決意が固まっていることくらいわかる。



 涙で酸欠状態になりながらも、私は何度も彼の頬を叩いた。

 もうこれで会うことはないというの?

 私の手は腫れ上がり、心は砕けそうになる。

 わかってるのよ。それがあなたの優しさだってこと。



 あなた以外の人と結婚なんてしたくない。

 もはや諦め顔のあなたに、今だけは子供のように感情をぶつけるのもいいと思った。

 幸せにしてくれなんて頼んでないわ。一緒にいられるだけで幸せなのに。

 情けない男だわ。そんなことすらわからないというの?



 馬鹿! 行かないで! 愛してる!

 ……どう泣き叫んでも、あなたは優しさを貫くのね。

 本当に私のためを思うなら、身を引かずに私の手を取ってよ。

 一度だってあなたは自分を優先しようとはせず、私のために私を捨てた。

 さよならも、ごめんも言わないで。欲しいのは、あなただけなのよ。

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