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337 おかあさん……というものは
「クルミパンにハマってる」
何の気なしに言ったいつかの言葉の通り、
ある日の食卓にはクルミパンが置かれていた。
「お母さん、ありがとう。私がハマってるの、覚えててくれたんだ」
わざわざ買って用意してくれたのだと思い、そうお礼をする。
「ああ、それ? 買ったんじゃないわよ。町内会の集まりの参加賞」
それもまた、母。
なーんだ。と思いながら、数日後には別のクルミパンが置いてあった。
「これ、どうしたの?」
「ああ、それ? 今度はちゃんと買ったのよ。美味しそうだったから」
それもまた、母。
いつでも愛情たっぷり。大好きなお母さん。愛してるよ、お母さん。
まだまだ言葉にするのは照れ臭い。態度で表すのも恥ずかしい。
でもでも、お母さんならわかってるよね?
いつまでも元気でいてね。




