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333 いつの頃からか……
いつの頃からか諦めた。
絵を描くのが好き。
「あんたはどうしてそんなに下手なの」
いつの頃からか諦めた。
友達と遊ぶのが好き。
「あの子なら、もう学校行ったわよ」
いつの頃からか諦めた。
憧れの先輩のことが好き。
「あの人、同じ年の彼女がいるんだって」
いつの頃からか諦めた。
いつの頃からか……。
ああ、そうして私はいつの頃からか、一人でいることに慣れてしまった。
諦めることを。
辛いことには目を背け、俯いては、気配を消し、ただ目立たないように。
そうして生きることに疲れた頃、自分の存在価値というものを考える。
私が本当に卑怯な人間ならば、ここで死を選ぶことも出来ただろう。
だが、私はしぶといのだ。
いつの頃からか、諦めることを諦めた。
前向きに行け。
自分の存在価値など、どうでもいいではないか。
或いは、ここに存在しているからこそ、自分に価値があると信じてみればいい。
いつの頃からか……私の世界は輝きだした。