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327 無言の青春
二人の男女がいる。
まだ高校一年生。
どちらからともなく歩み寄り、「付き合う」という確認もなく一緒にいる二人。
部活に出る少年を、ただじっと見つめ、待つ少女。
やがてまた一緒になった放課後の帰り道。
隣駅に住む少女のために、少年は自らの自転車を押す。
電車でたった三分の距離を、二人は三十分かけて歩いてゆく。
寄り添う二人の会話はない。
ただその顔はどこか恥ずかしげに赤くなっている。
夕焼けに映し出された二人の影が、微妙な距離を保ちながら伸びる。
やがて着いた彼女の家の前で、二人は互いを見て微笑んだ。
何も言わなくても、伝わっている。
触れずに伝わるその温もりが、永遠に続きますように――。