326 初恋
生まれて初めて、好きな人が出来た。
中学校で一緒になる、別の小学校から来た女の子。
どこにでもいる普通の子だけど、男勝りで明るく笑う彼女が好きだ。
でも彼女が突然、笑わなくなった。
学校も休みがちで、来ても人の輪の中に入らない。
まるで別人のように、もとの彼女はいなくなってしまったというのか。
その原因のひとつは、俺なのかもしれない。
俺が執拗に彼女を追い回すから、女子の間でよく思わなかったやつがいるらしい。
くだらない。そんな世界にいない彼女が好きだったのに。
でももっとくだらないのは、俺のほうだ。
初めての恋。どうしたらいいのか、俺はまるでわからないのだ。
彼女のためにしてあげられることはなんだろう。
もし付き合えるなら、男として守ってあげることは出来るだろうか。
それが出来ないのなら、俺は初めて人のために去ることになるのだろうか。
ねえ、せめてその笑顔が見られるなら、俺はなんだってするよ。
放課後の昇降口、俺は生まれて初めて、彼女の手を取った。
その瞬間、思ったんだ。きっと守ってあげられる。
君のために、俺は生まれ変わる。