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325 ゾンビのきもち
逃げないで……ぼくの大好きな人。
君と一緒にいたいだけなんだ。
いつまでも、いつまでも。
さあ、怖がらないでこっちへおいで。
この世界はとても居心地がいいんだ。
それなのに、なぜ君は逃げる?
掴んだ手を振りほどかれて、僕は悲しい気持ちになった。
逃げられれば追いたくなる。まるで鬼ごっこのように。
やがて追い詰めた君は、恐怖に顔を歪めて、崖から落ちた。
そこでぼくは気付いた。
ああ、あの人は僕が会いたかった君じゃない。
だって君は、僕と同じような体で、今まさに人間の男を崖まで追い詰めていた。