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324 福豆
「年の数だけね」
「ええ? 僕八つだけ?」
小学生の太一の手には、八粒の福豆。それを不満そうに言った。
「去年もそう言ってたね、太一。でも去年より一つ多いんだからね」
「そうだけど……」
「ハナちゃん、三つだけ……」
妹のハナは、更に残念そうに俯く。
「もう。後であげるから、今は年の数だけよ」
お母さんは苦笑してそう言った。
「いいなあ。おばあちゃんは五十個も食べられるんだ」
太一の言葉に、そばにいたおばあちゃんは笑う。
「いいでしょう? 太一も早く大きくなって、長生きしなくちゃね」
「うん! 豆いっぱい食べられるくらい、長生きするよ」
その言葉通り、太一は毎年の節分を楽しみにし、長生きすることになる。