321 好きになってはいけない人
きっとあなたは、どれだけ僕が頑張っても、振り向くことはないだろう。
あなたは愛する人に裏切られ、幸せな結婚を逃がしながらも別れることが出来ず、
そんな人生に疲れきって、新しい恋などする気さえないという。
それでもぶつかる僕の気持ちを、好意的に受け止めてくれるとは思うけど、
やはり度を過ぎた僕の態度に、辛い素振りを見せる。
目を逸らし心を揺らせ、そんなあなたを強引に奪うことは出来るかもしれないけれど、
揺れるあなたを挟み込んでいる息苦しさを思うと、僕はあと一歩が踏み出せません。
愛していると言いたいけれど、その一言が言えません。
あなたの苦しむ姿は、これ以上見たくないから。
あなたを救い出すことが出来ない僕は、
もう消えることでしか、あなたの気持ちを軽くすることは出来ないのでしょうね。
待っていたら、あなたが振り向くことはあるのでしょうか。
離れていたら、この気持ちは薄れるのでしょうか。
もう僕にも、選択の余地がありません。
苦しんでいるあなたのそばで、何食わぬ顔で見守ることなど、僕にはもう出来ない。
それほどまでに愛しています。
僕の気持ちには気付いているのでしょう?
答えをください。あなたのために、僕が出来る最後の選択を。