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313 MOTHER
「はい、おべんとう」
運動会の時にお母さんが渡してくれたお弁当は、
のちにコンビニ弁当の詰め替えだったと知らされた。
「はい、おくすり」
遠足の時にお母さんが渡してくれた酔い止めは、
のちにラムネ菓子だったと知らされた。
「はい、おまもり」
受験の時にお母さんが渡してくれたお守りは、
のちにお兄ちゃんのお古だったと知らされた。
いくら家が貧乏だからって、いくらお母さんがズボラだからって、
私は愛されていないのだろうか――。
あの日渡された受験のお守りの中に、
お母さん手書きの「必勝」の文字があったことを、私はのちに知ることになる――。