310 まみあな魔法学校へようこそ!
高校受験を前に、ふと検索して引っかかった、「まみあな魔法学校」の文字。
都市伝説のような形で魔法学校があるとは聞いたことがあるが、こんなにオープンにサイトがあるとは拍子抜けだし、怪しい雰囲気がぷんぷんと漂う。
「高等部もあるのか……って、いくら来年受験でも、こんなとこ受けないし」
私はそう言いつつも、その怪しげなサイトに釘付けになった。まるで映画や絵本の世界である。
「授業内容。魔法薬学、飛行術学、変身術学……呪いまである。こわー! 受験資格は……魔力を持っていること(潜在能力含む)か。じゃあ私は無理ね。両親からして、平々凡々」
そこでサイトを見るのをやめ、私は昼食を食べにリビングへ向かった。
すると、知らない男性のお客さんが来ている。
「あ、すみませんでした……」
私はそう言って、慌ててリビングから出ようとした。
するとその男性が、口を開く。
「君、まみあな魔法学校って知ってるかい?」
「ど、どうしてそれを!」
あまりにタイムリーな話題に、私は飛び上るほど驚いて、その男性を見る。
男性は頭のキレそうな中年男性で、塾の講師によくいるような、冷たい感じがした執事タイプの男性だ。
そんな私の観察をも知るように、男性は微笑む。
「私はこういう者です」
差し出された名刺には、まみあな魔法学校・広報事務と書かれている。
「まみあな魔法学校……」
「君、高校からうちの学校に来ませんか? 今からでもいいのですが、君にも今の学校生活があると思うので」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私に魔力なんて少しもありません」
「でも、あなたはうちのホームページを見ましたね?」
男性の言葉に、私は何が何だかわからなくなった。たった今さっきの出来事ではないか。
「見ましたけど……なんでそれを」
「それこそ、魔力の証なんですよ。あのホームページは、誰もが見られるものではない。魔力のある人しか見られないんです」
「嘘です! あんなすぐに検索に引っかかって……それに、私は魔法学校を探したわけじゃなくて、高校を探してただけです。ただの偶然です」
「偶然はあり得ないんですよ。なんといっても、魔法がかけられていますからね。興味があったらいつでも連絡をください。学校に通えば、あなたの魔力がどの程度なのかもわかるし、鍛えることも出来ますよ。では、失礼」
呆気にとられているうちに、男性は去っていった。
「私に……魔法?」
魔法のせいなのか、高校の行先が決まるからなのか、なぜか両親は手放しで賛成だった。
私はといえば、それから悩みに悩む。だが、何度でも見られる魔法学校のホームページは、なぜだか興味をそそられる。
「まみあな魔法学校……」
それから約一年後。私は謎だらけの学校に入学する――。