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305 愛の歌は捧げない
俺はギターを鳴らしながら、友達が貸してくれた流行の歌を聞いていた。
「君を離さない。君を守るよ……」
CDに合わせてギターを鳴らしていた俺は、そこで手を止める。
「くだらない……」
同じような歌ばかりだ。どうやって君を守るんだと、俺は苦笑する。
愛だ失恋だと独り言の歌を、俺は歌いたくない。かといって、流行っているのはそういう歌? 俺にとっては雑音じゃないか。
俺は友達から借りたCDを早々にデッキから取り出し、持っていた歌謡曲を流す。
古い曲は今でも色褪せないのはなぜか。今のように、誰もがシンガーソングライターじゃなかった。プロの作詞家、プロの作曲家、プロの演奏、生の演奏、そしてプロの歌手。合わせてやっと楽曲だろ。
とはいえ、俺もシンガソングライターの端くれ。愛の歌を作ることもあるけど、独りよがりの曲だけは作らないと決めている。
さて、世間が望む愛の歌を、どうやって料理しようか。