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003 白紙に戻そう
モノ書きは、今日も筆を走らせる。
頭の中は宇宙のように、無限の世界を繰り広げているのに、なぜだか世に送り出すことが出来ない。
それでも、やっと、物語が走り始める。
だがモノ書きは、その筆を止める。
そしてゴシゴシと、原稿用紙を擦り始めた。
「白紙に戻そう」
人生が終わったわけではない。物語はまた走り出すだろう。
モノ書きは、今日も筆を走らせる。
傍らには、小さくなった消しゴム。
「今日もやろう、相棒よ」
傍らには、使い古した何本かの筆。
「今日もやろう、相棒よ」
モノ書きは、今日も筆を走らせる。




