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288 FLASH ~ある休日の風景~

 都内某所の高層マンションの一室で、一人の女性がベッドから這い出た。

 小澤沙織おざわさおり。モデルとして活躍している二十歳の女性である。つい最近、カメラマンで親戚でもある、諸星鷹緒もろほしたかおと付き合い始めた。

 怒涛の忙しさを日々抱える鷹緒と付き合うのは思っていたより大変だったが、こうしてたまにでも休みが合う日は、最高なくらい幸せを感じる。

「ん……沙織?」

 未だベッドの上で、目も開けきらない鷹緒がそう言った。

「ここにいるよ。朝ごはんの支度するね。今日、映画見に行く約束でしょ?」

「朝飯なら外でもいいよ」

 そう言いながら、鷹緒は沙織の手を引っ張り、もう一度ベッドに引き入れる。

 後ろから抱きしめられながら、沙織は真っ赤になって目を閉じた。

「幸せ……」

「俺も」

 ぼそっと言った沙織の独り言に、鷹緒がそう反応してくれたので、沙織は嬉しくなって振り向く。

「鷹緒さんが、こんなに甘々だと思わなかった」

「甘々?」

「だって仕事の鬼じゃない」

「仕事のこと考えていいならいいけど? たまの休みくらい、好きな女のことだけ考えていたいじゃん」

「嬉しい!」

 二人は抱き合い、キスをする。

 付き合い始めのカップルは、幸せをかみしめていた。

 その時、家の電話が鳴り、鷹緒は口を曲げながら、電話に出る。仕事の電話だった。

「仕事? 行くの?」

 電話が終わるなり、沙織が恐る恐るそう尋ねた。

 仕事人間である鷹緒の邪魔はしたくないし、今までのデートも散々流れたので、不満はあるが仕方ないという気持ちもある。

 そんな沙織を尻目に、鷹緒はベッドから出て立ち上がった。

「そんなビビッた顔すんなよ。途中で事務所に届け物すればいいだけだよ」

「本当? でも、事務所に行ったら仕事増えるかも……」

「大丈夫だよ。今日はおまえとの休みって決めてんだから。ほら、行くぞ」

 鷹緒はベッドの上の沙織を持ち上げ床に下ろすと、もう一度、沙織を抱きしめた。

「いつも待たせてごめんな」

「ううん。いい。今日ちゃんとデートが出来るなら」

「ああ。映画、見に行こう」

「うん」

 二人は手をつないだまま、久しぶりのデートへと繰り出していく。

 普段会えない分、我慢していた分の溝が、埋められていくような気がした。

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