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285 後悔
君を見ているだけでいいんだ。
いや、僕には見ていることしか出来ない。
君に声をかけることも、君に触れることも許されない。
いつか、君を見ることすら出来なくなるのだろうか。
それでも、だから今、君を見続けていたいんだ。
小さな部屋から、人が出てきた。若い男女と小さな女の子。
かつて妻だった彼女は、新しい男とともに、僕の子供を育てている。
ああ、どれだけ悔やんでも悔やみきれない。
なぜ僕は、あれほどまでに荒れ狂い、君に手を上げ、怖い思いをさせたというのか。
どれだけ後悔して謝ったところで、君は許してくれないだろう。
僕はもう、何もしないよ。だからせめて、幸せな姿を見せてくれ。
僕が君たちにしてやれなかった、幸せな家族の姿を。
目に映る家族の形に絶望し、僕は姿を消す。出る幕などないのだ。