270 ラブ・レッスン
家庭教師の先生は思ったよりもイケメンで、思春期真っ只中の私は、ただそれだけでドキドキしている。
「みのりさん。ここの応用問題、もう一度おさらいしようか」
勉強が頭に入らない私に、先生は苦笑してそう言った。
申し訳ない……このままだと先生の成績まで下がってしまうのだろうか。最悪、辞めさせてしまうかもしれない。そうは思っても、先生を意識しすぎて何も頭に入らない。
うろたえている私に、先生は頭をかいて立ち上がった。
「その前に、気分転換しようか。学校でも家でも勉強なんて堅苦しい毎日だろうし、僕とも打ち解けてないから、そりゃあやりづらいよな」
「いえ! そんな。先生は何も悪くないです。悪いのは私で……」
それを聞いて、先生は怪訝な顔をしてる。
「どうして? みのりさんだって悪くないでしょ。駄目だよ、自分を悪く言っちゃ」
「違うんです……私、今のままじゃ何も頭に入らなくて……あの、私、先生のこと……」
そう言ったとことで、私の顔の前に先生の顔が間近に迫っていた。
「せ、先生……?」
「僕のこと意識してるの?」
「……はい」
「それで勉強に身が入らないと?」
「ごめん、なさい……」
先生は私から離れると、溜息をもらした。
「そんなことで身が入らないとか言われると、僕はクビになっちゃうよ」
「すみません……」
「先生を代えてもらってもいいんだけど、どうせ僕を好きだと言ってくれるんなら、こっちのレッスンもする?」
その時、先生の唇が私の唇に触れた。あまりに突然のことで、私は茫然とし、何も言えなくなってしまう。
そんな私に、先生はそっと笑う。
「初めて?」
私はこくりと頷いた。ファーストキスを奪われたことに、腹を立てるどころか嬉しさを感じている。
「続きは答えを解いてからね」
アメとムチを与えられ、私は先生の思うがまま……。