252 アイドルの初恋
恋愛禁止のアイドルになるために、私は彼氏を捨てた。
まだ中学生。彼よりも大切なものがある。でも、彼も私を応援してくれた。
事務所に入ると同時に転校し、高校に入る頃には、中学の友達と連絡を取る時間もなくなった。
でも、失ったものも大きいのに、しがないアイドルの端くれ。
惨めな思いもさせられたけど、それでも私は頑張って、今では少しは名の売れるアイドルになれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼女がアイドルになると聞いた時、僕は応援しようと思った。
結果的に別れることになったけれど、間違いなく僕の初恋。
もう彼女は別世界の人。僕は誇らしく思う。
そんな彼女を忘れようとしていた頃、僕は町で声を掛けられた。
興味がそれほどあったわけじゃない。
でも僕は、気付けば俳優の端くれ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼が俳優になったことを知ったのは、テレビで彼を見かけたから。
彼はスピード出世で、すぐにテレビドラマに出るまでになった。
私は彼を応援しながらも、少し嫉妬を覚えた。
でもやっぱり、今でも大切な初恋の人が輝いているのは嬉しい。
同じ世界に入ったからって、ジャンルは違うから会うこともないのだろうけれど……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そう、僕の初恋は誰にも秘密。
いまさら恋愛禁止の彼女の妨げにはなりたくない。
でもやっぱり、今でも大切な初恋の人が輝いているのは嬉しい。
同じ世界に入ったからって、ジャンルは違うから
会うこともないのだろうけれど……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
とあるテレビ局の片隅。一瞬、背筋が凍った。
彼女だった。見る前に、雰囲気でわかった。
変わらない笑顔で、会釈を交わす彼。
変わらない瞳で、会釈を返す彼女。
たったそれだけで、相手の気持ちがすべてわかった気がした。
たったそれだけで、今までの気持ちがすべて伝わった気がした。
ああ、やっぱりこの人が好きだ。
ああ、やっぱりこの人が好きだ。
まだ秘密の恋。
いつまでも秘密の恋。
でも、気持ちはあの頃と変わらないんだね。
そう、僕らの心は今も繋がっているよ。