025 車掌さん
電車の中。病院の待合室のように静かだった車内は、大きな駅に着いたと同時に、その静けさから一気に放り出される。
大声で話す女子高生。
音を出してゲームしている小学生。
イヤホンの音楽が漏れている青年。
携帯の着メロが鳴り響いている中年女性。
車内にゴミをポイ捨てする中年男性。
数え上げたらキリがないくらい、車内は騒然とマナー違反の嵐が起こる。
その時、車内アナウンスが流れた。
『え~、駆け込み乗車はおやめください。また、携帯電話、ゲーム機など、音の出るものは予め電源をお切りいただくか、マナーモードに設定の上、通話はご遠慮ください』
「ウゼー」
「遠慮って強制じゃないっしょ? うちら遠慮しないし」
「ってか、マジ、ウゼー」
大声で話していた女子高生たちが、そう言った。
その時、またしてもアナウンスが流れる。
『はい、今、ウゼーと言った女子高生の皆さん、大声で話すのはおやめください。あと、近くでチカンが狙ってますから気をつけて。あ、二両目の紳士、車内はゴミ箱じゃありませんよ。ゴミは拾ってください。一両目、七両目でイヤホンから音漏れしている皆様は、聞こえないフリしても駄目です。あとでイヤホン耳から引っこ抜きにまいりますからね~』
今日も車掌さんは、大忙しだ。