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244 八月三十一日

「くそう。なんでもっと早くに宿題やっておかないんだよ!」

 お父さんの声が聞こえた。

 今日は八月三十一日。明日から学校というのに、息子のタケシは一つも宿題をやっていない。

 我が子が一つも宿題を出さないとなれば家の問題になってしまうので、家族総出で宿題を仕上げていった。

「でも、大人ばっかり宿題なくてずるいよ」

 何発か殴られたタケシが、泣きながら言う。

「バカ言え。俺だって、ガキの頃には宿題山ほどあったぞ。今の子供のほうが、宿題なんてそんなにないと聞いたが……」

「じゃあお父さんも、宿題最後の日に家族に手伝ってもらった?」

「……」

 お父さんは考えるように思い出す。

「いや! 俺は三十日には仕上げていたぞ。まあ……家族には手伝ってもらったけどな」

 正直なまでのお父さんの言葉に、タケシは少しほっとした。

「来年は早く……せめて三十日までには仕上げるよ」

「期待しないで待っておくよ。よし、今日は虫捕り、美術館、博物館、全部やるぞ」

「うん!」

 タケシを連れて、お父さんは家を飛び出していく。

 今日中に指定された美術館などを回らねばならないのは地獄のようだったが、それもまたこの家の夏休みだと思って諦めた。なによりタケシは可愛い息子。この夏は大変な分、一生心に残る思い出になるに違いない。

「よし、タケシ。来年は俺も俺の自由研究でもするから、おまえはライバルだ。どっちが早く仕上げられるか競争するぞ」

 思わぬお父さんの参戦が決まり、来年の夏休みは刺激的になりそうだ。


 さて、今日も子供に悩まされているお父さんお母さんが、全国に無数にいるのだろうか……。

 そこで焦っているキミ。こんなところで油を売っていないで、やり残しがないかの確認を。そして家族のためにも自分のためにも、来年こそは、夏休みの宿題なんて、さっさと仕上げてしまおう!

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