024 チェンジ
鏡を見て、真子は自分の顔に触れる。
「はあ……」
溜息しか出てこない。
メイクをしてなんとか外に出られるものの、なんて貧相な顔立ちだろう。そう思うと、表情はどんどん暗くなる。
「笑え、ブサイク……でも、もっと肌が綺麗だったら……化粧が上手だったら、背が高ければ、髪にツヤがあったら……」
不平不満はいくらでも出てくる。
「メイクをしたままのこの自分が、最低ラインだったらいいのにね……」
真子はおもむろに、鏡に触れた。
すると、辺りが一瞬、眩いばかりに光る。
「うん、今日も綺麗」
その時、目の前にいる鏡に映った自分が、自分の意志とは関係なくしゃべり始めた。
「今日もメイクばっちりだし。かわいい、かわいい。ようし、今日も仕事頑張るぞ!」
そう言って、鏡に映った自分は去っていった。
(鏡の中の私に、私を乗っ取られた?!)
真子の頭はこんがらがりながらも、無意識のままに職場へと向かっていく。
だが、なんだかいつもより気分がよく、明るい気持ちでいる。
「おはようございます!」
元気よく挨拶した真子に、会社の人間は少しぽかんと見ていた。
「あ、ああ、おはよう……どうしたの? 何かいいことでもあったのかい?」
「いいえ」
果たして、鏡の中の真子が真子を乗っ取ったのか、真子が無意識に変わろうとしているのか、そこまではわからない。
だが、前よりも周りの反応が良くなったこと、真子の気持ちがいつも前向きであることは、真子の望んだ世界である。
そしてここにいるのは確実に、前とは違う、新しい自分――。