237 夢で逢いましょう
最近、気がつけば同じ夢を見てる。そして同じ人に会う。
知らない人――知らない男性が、私に笑いかける。時には公園で、時には会社で、時にはレストランで、まるでデートのように、私はその男性と夢で毎日のように会っている。
「誰なんだろう……」
現実の世界での面識はない。でも、毎日のように会うその男性に、私はいつしか心を奪われていた。
決して美形ではない顔立ちだが、背が高く、優しそうな人だった――。
そう思っていると、信号待ちの通りの向こうに、その人がいた。
「似てる……」
私は思わずそう呟き、その男性に釘付けになる。
毎日のように見てはいても、所詮は夢。ハッキリと確証はなかったが、その人はよく似ていた。
信号が青になり、私はゆっくりと横断歩道を渡り始める。男性もまた、こちらに渡ってくる。
「あ……」
ふと気がつくと、男性の傍らには背の低い女性がいて、その間に手を繋いだ子供がいる。何処からどう見ても、家族である。
「……そっか」
心のどこかで、運命の人なのではと思ったが、それも違う。この光景は、どこかで見たことがあった。それは、よくあの男性が今日と同じように家族連れで歩いているのを、無意識に見ていたためである。
なぜあの男性だけが夢に出てきたかはわからないけれど、すべての謎が解け、私は誰にも気づかれないように、そっと笑った。
夢なら夢のままで、現実で会いたくはなかった――。
その日から、夢にあの男性は現れていない。