表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
226/371

226 幼き恋の物語

 幸太は路地裏から顔を覗かせた。

 いつもこの時間に通る、クラスメイトの志保を待っているのだ。とは言っても、待ち合わせをしているわけではない、いわゆる待ちぶせというやつではあるが、奥手な幸太にとっては、それが精一杯の行動。

「来た……」

 志保の姿を見つけ、幸太は路地裏に身を寄せた。

 毎日ここで志保の姿を見つけては隠れ、通り過ぎたのを見計らって出ていく。そして数メートル後ろを歩く。

 大人であれば完全なストーカー状態ではあるが、小学生の幸太は、まだ可愛げのある行為であることは、毎日その光景を見ている商店街の人々の間では有名な話だ。

コウちゃん」

 路地裏の幸太は、突然横からそう呼ばれ、驚いて立ち上がった。

 そこには憧れの志保がいる。

「し、し、志保ちゃん……ど、どうしてここへ?」

「だって幸ちゃん、いつもここから出てくるじゃない? ここのお店が幸ちゃんの家だっていうのは知ってるし……」

 商店街の路地裏。表の店は幸太の家が経営している煎餅屋だ。

「し、知ってたの?」

「ううん。昨日、真由ちゃんが言ってたの」

 真由というのは、同じ商店街に住む幸太の幼馴染みである。当然、幸太の好きな子が志保ということは筒抜けであり、一番頼りたくない相手でもある。

「真由のやつ……」

「幸ちゃん、志保のこと好きなの?」

 突然そう言われ、幸太は拍子抜けした。

「な、なんで……」

「だって、こうして志保のこと待ってたんでしょう?」

「……ま、待ってなんかないや! 自意識過剰女!」

 ズバリを言われて行き場を失った幸太は、思わずそう言って、走り去って行った。

 学校に着いた幸太は自己嫌悪に陥り、志保にも無視されるようになったのは言うまでもない。

 そして見知らぬところでほくそ笑んでいるのは、この物語には名前だけの登場となった、幸太のことを好きな真由であることは、一応耳に入れておいてもらおう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ