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222 ナガサキからフクシマへ
数十年前の今日、八月九日。
三日前に広島に新型爆弾が落ちたことは知っていましたが、
その威力があれほどまでにすさまじいということまでは、
この目で見るまでわかっていませんでした。
ただ飛行機の音が聞こえ、とっさに防空壕へと駆け込み、
高台の防空壕から出て、次に見た長崎の街は、まさに瓦礫の山。
家一軒残っておらず、人が目の前で次々に倒れてゆく。
まさに、地獄――。
言い過ぎではありません。地獄そのものでした。
放射能による知識をまだ誰も持っていなかったので、
私もまた被曝を免れず、とうとう家族の行方もわかりませんでした。
あれから六十六年後の、二○一一年、三月。
東日本大震災により、福島県の原発から放射能が漏れたというニュースを聞き、
私はあの日の悪夢を思い出しました。
平和になった日本にも、あの日と同じ恐怖が今もなおあるのだと。
原発が悪者だとは言いません。
ただ、唯一の核被爆国である私たちが担うこと、
私たちだから言わなければならないことは、多くあると思うのです。