221 待つわ
街はクリスマスムード一色。どこもかしこも華やかで、駅前の大きなクリスマスツリーも、誇らしげに輝いている。
そんな街を見つめながら、私だけ時が止まったかのように、見るからに寂しげな駅前ロータリーで、交差点を見つめてる。
「今、仕事終わったから。すぐ行くよ」
彼から電話でそう言われたのは、もう三十分も前のこと。
私はそんな電話を受けて、ウインドウショッピングを終えてすぐにここへやって来た。彼の会社からなら、十分もあれば着くはず。私は彼の車を探す。
「お待たせ!」
そんな声に振り向くと、少し離れた車の乗降場所で、落ち合ったカップルがいる。
「もう、遅いよ」
「ごめん。寒かったろ?」
そんなやり取りを横目で見つめながら、私は溜息をついた。
この場所にずっといるのは私だけ。そばにあるタクシー乗り場の運転手さんも、私を不思議そうに見てる。
「何かあったのかな……」
あまりにも遅い。事故でもあったのだろうか。何かヘマをして、捕まったんだろうか。
いらぬ憶測を飛ばして、私は携帯電話を握った。だが、運転中の彼が電話に出られるはずもない。何かあれば向こうから電話が来るはずだ。
私はそう思い直して、冬空の下、北風に身をよじる。
「まだかな……」
キーンと、頭が痛くなってきた。
「もう。風邪引いたら呪ってやる……」
そんな時、パァーっと顔にライトが当たり、私は顔を上げた。そこには、見なれた車がある。
「ごめん! 遅くなった!」
眉毛の下がった彼がいる。その顔を見た途端、私は笑った。
「よかった。事故じゃなかったんだね」
「ごめん……工事だなんだで迂回させられて、かなり遠回りになったんだ。寒かったろ。早く乗って」
「……馬鹿」
小さく言った私に、彼もまた笑う。
「ごめん」
暖かな車内に、凍りついた心も溶けていく気がした。