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022 ミュージシャンの家探し
「職業はミュージシャン。家を探しているんです」
カジュアルファッションで、一人の男が不動産屋へ入る。
「ミュージシャン……収入は安定されているんですか? どこかの事務所に入っているとか……」
「いえ。僕はフリーのミュージシャンです。収入は……そうだなあ。今は安定しているけど、そりゃあこの世界、どうなるかわかりませんよ」
その日、彼の家は見つからなかった。
次の日、彼はスーツ姿で、不動産屋へ入る。
「職業はミュージシャン。家を探しているんです」
名刺代わりに差し出したのは、有名アーティストのコンサート写真。彼の姿が映っている。
「どんな家をお探しですか? どうぞお座りくださいませ」
人は第一印象で決まる。