表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/371

217 アイツへ

 ねえ、って呼べば、

 うん? って答える。


 いつの間にかお互いが空気のような存在になっていて、

 心地よくて、いるのが当たり前で、いなくてもその気配を感じられる。


 でも、そう思ってたのは、勘違いしていたのは、私だけだったんだね。


 あいつはずっと一緒だった友達。

 弟のような、親友のような、男女とかそういうの関係なくて、近所に住む仲の良い男の子。


 子供の頃は、お互いに、大きくなったら結婚しよう、なんて幼い約束を交わしたこともあった。

 でもいつからだろう。あいつは私を避けだした。


 からかわれる。いつまでも女とばかり遊んでいられない。おまえも彼氏くらい見つけろよ。

 そんな思春期の反発とともに、あいつに彼女が出来た。

 見たこともない笑顔。感じたこともない優しさ。

 あいつはもう、私の知ってるあいつじゃない。


 もっとつかまえておけばよかった。もっとちゃんと向き合っていればよかった。

 空気のような存在だとか思ってなくて、ちゃんと告白しておけばよかった。

 後悔は、いくらでも出てくる。


 でも、私の好きだったあいつはもういない。

 祝福するつもりはない。当たり散らす気もない。

 いつか――そう、いつか。

 お互いに年を取り、子供なんかも出来たりして、そんな何十年後かでも、あの頃はあんたのことが好きだった、なんて、笑い話にでもして伝えられるといいな。


 そんなことを考えているから、今はまだ失恋の涙に浸らせて。

 言葉が欲しいなら、あとで伝えるわ。

 結婚、おめでとうって。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ