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190 三十年目の未来
あの人は知ってる。私の心が自分に向いていないことを――。
結婚して三十年。もうお互いに年を取った。
永遠の愛を誓い、愛する子供も産まれ、幸せな毎日。何も恥じることはないが、刺激を求めてしまうのは私だけだろうか。
末の子供も家を出て、夫も定年を迎え、二人きりの毎日。
どちらかというと窮屈な毎日を、きっとあの人も感じてる。
この閉塞感は、どうすれば拭えるのだろう。
もう若くもないし、一人で生活することなど出来るかはわからない。
つつましくも安定した今の生活を続けるほうに傾くが、なんの目標もなくただ生きているだけというのは、なんとも虚しく感じてしまう自分がいる。
私をここから連れ出してくれる人は、あの人でもなく、誰もいないだろう。
では、私が自分からここを飛び出すほかないのだろうか。それともこの生活を、どうにか楽しく出来るのだろうか。
私たちは今、岐路に立っているのだ。
今日、あの人と話してみよう。これからの二人のこと。そして見つけるべく、新たな夢を――。