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184 最強三人組

 小六の俺たちは最強だった。俺・テツとシュウとコージ、俺たちはいつも一緒で、バカやって遊んでた。

「テツ! エロ本見っけた」

「こっちも」

 市民グラウンドの脇は、エロ本の宝庫。クラスメイトの女共にマドンナ的な子はいたけど、四六時中一緒はマジ勘弁。男同士で遊んでたほうが遥かに楽しい。

「あれ、シュウは?」

 いつの間に姿が見えなくなったシュウは、すぐに姿を現わした。その手には、数冊のエロ本。

「あははは! なんだよ、シュウ。すげえ戦利品」

 その時、シュウは曇った顔を見せた。

「餞別……ってわけじゃないけどさ。ごめん。俺、中学私立に行くことになった……」

 その言葉に、俺とコージは顔を見合わせる。

「え……でもおまえ、公立にするって……」

「お母さんが私立に行けって……この間受験があったんだけど、受かったんだ」

「そんな……」

 俺たちは、くだらない遊びも忘れ、その場に立ち尽くす。

「……だからなんだよ。離れ離れになるからって、友達じゃなくなるわけじゃないだろ」

 そう言ったのはコージだ。コージの言葉に、俺も我に返った。

「そうだよな。一緒の学校行けないのは正直残念だ。中学も高校も、三人で馬鹿やってたかった。でも……おめでとう、シュウ。春からぼっちゃんか」

「ぼっちゃんはやめてくれよ。でも……ごめん。俺も悔しいよ」

 そう言ったシュウに、俺たちはまた少し沈んだ。


 その春、シュウは私立中学に入学。俺とコージは同じ公立の中学に通ったが、クラスも違えば自然と会う機会もなくなっていた。最強だと思ってた三人組は、こうして次第にバラバラになり、高校へ上がる頃には、俺とコージも別々の高校になり、それこそパタリと音信不通になってしまった。


 それから数年後の冬――。

 俺は一人、成人式へと向かった。

「テツ?」

 そう呼ばれ振り向くと、そこにはシュウとコージがいる。

「おまえら……」

「今、そこで会ったんだ。テツとも会えるかと思ったけど、よかった」

 お互いに少し大人びた感じで、少し照れたものの、会えば昔が蘇り、話も弾む。

「この後、暇? 久しぶりにどっか行かね?」

「じゃあ、あそこ行こうよ。エロ本島」

「あははは。変わらねえ! でもいいんじゃない? あそこならあんまり人も来ないし。ゆっくり話せるよ」

 俺たちは、よく遊んでいたあのエロ本の宝庫である市民グラウンド裏へと向かっていった。

 目的はそれだけじゃない。俺たちは、忘れていなかった。いや、会って思い出したというのもある。

「確かこのへんだったよな……」

「うん。間違いないよ。このデカイ石、あの時のままだ」

 大した器具もなく、俺たちは地面を掘り続ける。

 しばらく掘ると、缶に当たる音がした。

「あった!」

 それは大きなタイムカプセル。俺たち三人組がバラバラになった中一の春に、三人で埋めたものだった。

「こんな箱だったっけ?」

「そうだよ。煎餅の缶、持って来たの俺だもん」

 俺はそう言って、土のついた缶の箱を開けた。

 中にはノートの切れ端と、宝物だったねりけし、お菓子のシールや、当時のエロ本が入っている。

「うわ。くだらねー」

「でも懐かしい」

 ノートの切れ端を開くと、そこには三人の寄せ書きが書かれている。

 シュウは「私立行くけどずっと友達でいてくれ!」、コージは「ハタチになったら会おうぜ!」、俺は「俺たちはいつだって最強三人組だ!」と書いていた。短いけど、当時の思いが蘇る気がした。

 俺たちは、それぞれに笑う。

「汚ねえ字」


 それから俺たちの交流は復活した。みんなそれぞれ、就職や結婚を迎えたけど、今でも家族ぐるみの付き合いを続けている。


 俺たちは、死ぬまで最強三人組だ!

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