183 マザーコンプレックス
あなたのために生きてきました。
あなたの思い通りに、あなたの望むように、あなたの思い描くままに、
僕はあなたの敷いたレールの上を、脱線することなく今日まで走ってまいりました。
努力を苦とは思いませんでした。
マザコンと言われても、つまらないと言われても、気持ちが悪いと言われても、
親を敬うことに抵抗などありませんでした。
そんな僕にも、初めて本当の恋と呼べるような、好きな女性が出来ました。
けれども彼女は、僕のことなど相手にしてくれません。
そう言えば、あなたは彼女のことを悪いと言うのでしょうか。
それとも、家柄の問題で、彼女は問題外と言うのでしょうか。
あなた今日、見合い写真を僕に見せました。
このまま僕は彼女のことを忘れ、あなたの敷いたレールを走り続けるのでしょうか。
頑張ることを知らずに、結婚も結婚後のことも、あなたに判断を仰ぐのでしょうか。
僕には判断力や決断力がありません。
あなたがリモコン、僕はロボット。
それがおかしいとも思わなければ、それがいいのだと思い込まされてきました。
だけど時々、思うのです。
あなたが死んだら、僕はどうして生きていけばいいのかと。
そして誰もが口を揃えて言う、僕が異常者だということを、僕はどこかで認めているのです。
これは、あなたに対するささやかな抵抗?
それでもあなたは、僕を洗脳し続ける。
そして僕も、この居心地のいい場所から出たくないために、現実から目を逸らし続けるのです。