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174 おとうと

 僕が初めて殺意というものを抱いたのは、わずか三歳の時。弟が生まれ、すべての目が弟に注がれるのを目の当たりにして、僕は本気で弟が憎かった。

 べつに、一概に親や周りの人間が悪いとは思わない。僕は突然、兄としての立場を与えられたが、僕のほうが優遇されることもあったし、時には甘えさせてくれた。それでも僕は、弟に殺意を抱く。


「お兄ちゃん」

 歩き始めた弟が、僕に手を伸ばす。

 近寄るな。おまえなんか、好きじゃないんだから。


「お兄ちゃん」

 学校に通い始めた弟が、僕に手を伸ばす。

 近寄るな。おまえなんか、好きじゃないんだから。


「お兄ちゃん」

 僕より先に結婚した弟が、僕に手を伸ばす。

 近寄るな。おまえなんか、好きじゃないんだから。


「僕のこと、やっぱり嫌いなんだね。でも僕は、お兄ちゃんのこと尊敬してるし、好きだよ」

 父親の葬式で、ハンカチを差し出しながら、弟がそう言った。

 馬鹿野郎。やっぱりおまえなんか、好きじゃない……。

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