163 ある恋人たちの風景
彼氏の友哉と同棲中の宏美は、台所で友達と料理を作っていた。居間では友哉と、友達の彼氏がゲームで遊んでいる。
「ヒロの彼氏ってカッコイイよね」
そう言われ、宏美は口を曲げた。
「はあ? あんなの顔だけ。馬鹿みたいに煙草吸うし、風呂もあんまり入らないし、料理出来ないわ、ゴキブリ一匹退治出来ないわでサイアク」
「じゃあ、ウチが彼氏と別れたら譲ってよ」
「いいよー」
「はあ。いつもながら淡々としてらっしゃる。よくそれで同棲なんてしてるね」
「ベタベタすんの気持ち悪いって」
宏美は笑って、居間へと料理を運ぶ。
数時間後、友達が帰り、二人きりとなった宏美は、友哉に抱きついた。
「なんだよ、急にベタベタして。さっき聞こえてたぞ。俺、あの子と付き合っていいわけ?」
「駄目だよ! 絶対ダメ。悪い冗談なんだから」
「まーったく、わかりづらいヤツ」
「私は、友哉がいなくちゃ生きていけないもん」
「とかなんとか言って、学校で会ってもシカトするくせに」
友哉の言葉に、宏美は咳払いをする。
「だってなんか……むずがゆい」
「むずがゆい? なんだ、それ」
「好きすぎて、どうしていいかわかんなくなっちゃうってこと! 恥ずかしいのよ。友達の前で顔なんか合わせらんない。なんだか夢みたいなんだもん。私が友哉と付き合ってるの」
それを聞いて、友哉は苦笑した。
「バーカ。俺のが好きだし」
二人は何度も抱き合った。