160 努力は認めてほしいです。
高二にして、初めて彼氏が出来た! 嬉しくて飛び上りそう。告白して来たのは向こうから。でも、私もずっと好きだった。
「じゃあ今度の日曜、遊園地ね。私、お弁当作るね!」
そう約束をして、私は夜中のうちからお弁当作りに取り掛かった。といっても、普段はほとんど料理なんかしない。お母さんも仕事をしているし手伝ってくれるような人じゃないから、料理本を見ながら一人でやらなきゃいけない。
だけど、愛する彼のため。材料はもちろん前もって買っておいた。中身は定番の卵焼き、からあげにタコさんウインナーに……とにかく欲張りなお弁当にする!
数時間後、出来上がったものは……しょっぱい卵焼き、べちょべちょのからあげ、ギトギトで足も切れかかったタコさん?ウインナー。
「うわーん! こんなの持って行けないよ……」
私は絶望感でいっぱいになりながらも、そのお弁当を詰めた。でも、出来ればこのまま仮病でも使って行きたくない。そんな感じだった。
だけど、待ち合わせ時刻は迫っている。まだお互い携帯も持たせてもらっていないから、仮病を使うにしてももう知らせる手立てがない。
仕方なく、私はそのお弁当を持って待ち合わせ場所に向かった。
「おお、弁当? 楽しみ!」
彼氏は屈託なくそう言って笑う。
「でもあの……ごめん。失敗しちゃったの。一応持ってきたものの、コンビニで買っていったほうがいいと思う……」
私はそう言った。でも、彼は笑ったままだ。
「失敗なんて大丈夫だよ。とにかく行こう」
私たちは、初デートの遊園地へと向かっていった。
遊園地は楽しい。お弁当の失敗もすべて忘れていたが、お昼になってその問題は思い出された。
「そろそろごはん食べたいな」
「う、うん……」
私は渋々、お弁当を開けた。
見るも無残の中身に、さすがの彼も血の気の引いた顔をする。
「やっぱり……買ってこよう。少し高くなるけど、レストランとかあるし」
「いや、せっかく作ってくれたんだ。見た目はまずくとも美味しいっていうのはよくあるし。いただきます!」
そう言って卵焼きを食べ出した彼は、一瞬にして吐き出した。
「なんだこれ! まっずー!」
私が悪い。そんなことはわかっている。でも、人間誰しも期待はしているものだ。
そんな思いやりのない彼に、私は一瞬で切れて、お弁当を畳んで立ち上がった。
「さようなら」
初めての彼氏に失望し、その日のうちに分かれたのは言うまでもない。
そして、私はトラウマを克服しようと、その日から料理の腕を磨いた……。
努力は認めてほしいです。