155 フェチ
初めて彼氏が出来た。
初めてのデートは念入りに。
新しいワンピ、濃すぎない化粧、初めてのコンタクト。
「あれ、コンタクトにしたんだ」
彼が言った。
「うん。もう度が合ってなかったから、思い切って……」
本当に思い切った。今まで怖いと思って、ずっと眼鏡だったから。
初めてのデートは、いい感じ。
映画見て、カラオケ行って、ごはん食べて……ずっと憧れてたこと。
「ごめん。別れよう」
初めてのデート……突然、彼から切り出された。
どうして? 何がいけなかったの? 服のセンスがなかった? 化粧濃すぎた?
どう聞いても、彼は何も答えてくれない。
どうして……。
「知らなかったの? 彼、眼鏡フェチだよ」
後日、友達がそう言った。
そんなことで? だったらそう言えばいいじゃない。
でもどんなに言ったって、もう遅いんだよね……。
翌日、私は彼の前で眼鏡をかけた。
チラチラとこちらを見る彼。
「ごめん。やっぱり君のこと――」
なんて馬鹿で、単純な男だろう。
「私のほうこそ、ごめん。私、あなたのこと好きじゃない」
初めての彼氏だなんて浮かれていられない。
ちゃんと私を見てくれる人じゃなくちゃね。