153/371
153 春の指先
十五歳の少女・小春は、小学校の頃からずっと思い続けていた隼人に告白をし、晴れて恋人となった、高一の春――。
小学校時代から知り合っている二人には、妙な緊張感が襲う。
少なからず、互いの子供らしい失態は知っているし、突然恋人となっても、何をしていいのかわからなかった。
「小春――」
隼人は数歩先を歩き、空を指差した。
途端、風が吹き抜け、辺りはピンク色の雪が舞う。
「わあ……」
春先の桜並木は、すでに葉桜になり始め、風が吹けばたちまちピンク色の花びらが、雪のように二人を包みこむ。
「綺麗だね」
やっと緊張がとれた小春の笑顔に、隼人も微笑んだ。
そして二人の手が、互いの勇気によって触れる。
触れた指先に一瞬戸惑いながらも、二人はもう一度、手を繋いだ。